ゆみと3姉妹

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 三人は、感想文を書き終わった。

「ゆみちゃん、遊ぼう」

 三人の書き終わったのを確認して、由香が
ゆみに話しかけた。

「いいよ」

 ゆみは返事して、由香ちゃんと一緒に、自
分の寝室に行った。
 二人は、部屋にいっぱい並べられているぬ

いぐるみで遊び始めた。
 一緒にやって来た美香は、ゆみが兄に買っ
てもらったばかりのテニスのラケットを見つ
けて、手に取っていた。

「美香さんも、テニスするんですか?」

 ゆみは、お友達になりたくて、美香に声を
かけてみた。

「テニスは、そんなにはやらない」
「あたしも、日曜日に、お兄ちゃんに買って


もらったばかりで、まだ一回もやったことな
いの」

 ゆみは、一生懸命上手に日本語で答えて、
美香とお友達になろうとしていた。
 美香のほうは、まだ今日初めて会ったばか
りのゆみを、まだ警戒しているようだった。
 だいたい、隆お兄さんは日本語を普通に話
せるのに、ゆみって子は、日本語があやふや
なのも警戒が解けない理由だった。
 この子って、どういう子なの?髪だって茶
っぽいし本当に日本人の子なの、美香は、ゆ

みに会った時からそう思っていた。

「今日ね、美香ちゃんとお友達になれたの」

 その日の夕食のとき、ゆみは、兄の隆に美
香と部屋で遊んだときのことを話していた。

「由香ちゃんや美香ちゃんと一緒に、お部屋
でぬいぐるみで遊んだのよ」

 隆は、今日は、ちょっと会社で忙しくて疲
れていたので、正直もっと静かに夕食を食べ


たかったのだが、

「お部屋で、三人でぬいぐるみで遊んでいた
んだけど、ぬいぐるみだと良明君が男の子だ
からつまらないだろうからって、あとからお
兄ちゃんのエアホッケーで遊んだの」
「そうだったな」
「お兄ちゃんよりも、良明君の方がエアホッ
ケー上手だよね」
「そんなことはないさ、お兄ちゃんは今日は
会社でお仕事してきた後だったからな」

 リビングの片隅に青いプラスチック製なの
だが、電源を入れれば、ちゃんと床からエア
ーが吹き出してホッケーの玉が滑るホッケー
ゲームがある。
 何年か前のクリスマスプレゼントに、ゆみ
が買ってもらったものだったが、ゆみよりも
大人の隆や来客した大人の男性の方が、夢中
になってプレイするので、ゆみから隆にあげ
るって言って、今は隆のエアホッケーになっ
てしまったものだった。

 実際には、リビングに置いてあるので、ゆ


みも、隆も、どちらも使っているのだった。

 ゆみは、今日の午後、岡島さんの一家が遊
びに来てくれたときのことを、夕食の間、ず
っと隆に話し続けていた。
 最初は、ちょっとうるさそうに聞いていた
隆だったが、ゆみが楽しそうに話すのを聞い
ているうちに、和んできて一生懸命聞き役に
徹してくれていた。

「そういえばさ」
「どうした?」

「あたし、日本語よくわからなかったんだけ
ど、良明君ってお弁当食べないとか言ってな
かった」
「岡島さん、良明のお母さんの話してたこと
だろう。ゆみ、ちゃんと日本語聞き取れてい
るじゃないか」
「お弁当食べないって?」
「学校では、良明は日本の学校にいるときも
お弁当をぜったい食べなかったんだってさ」
「どうして?」
「さあな」
「お腹空いてなかったの?」


「そうじゃないだろう」

 隆は、ゆみは、ちゃんと岡島さんの日本語
を聞き取れているのかと思ったが、本質的な
部分は聞き取れていないんだなと思った。

「日本の日本人はランチは食べないの?」
「そんなことないさ、ヒデキ君とかだってラ
ンチちゃんと食べているだろう」
「うん」
「なんていうのかな、学校では人前ではお弁
当が食べられないんだってさ」

「どうして?」
「そんなのお兄ちゃんだって知らないよ。俺
だったら、午前11時ごろにはお腹空いて、
ゆみの作ってくれたお弁当食べたくなるけど
な」
「お兄ちゃんの話はどうでもいいの」
「それは、どうもすみません」
「で、良明君は?」
「うーん、要するに恥ずかしがりやさんなん
だな。みなの前でごはん食べるのが」
「お腹は空かないの?」
「お腹は空いているだろうな。でも、お腹が


空くことよりも、皆の前でごはん食べること
の恥ずかしさの方が嫌なんだろうな」
「ふーん」

 ゆみには、隆の話がわかったような、わか
らないような感じだった。

「でも、あたしが良明君のお弁当を箸で、良
明君のお口に持っていくと食べるよ」

 ゆみは、学校の食堂で、良明にお弁当を食
べさせたことを思い出して言った。

「じゃ、本当は食べたいのかもな」
「そうなの?」
「ああ、だけど恥ずかしがりやさんだから、
食べられないんじゃないかな」

 ゆみは、兄の話を聞いて、なんとなく自分
なりに納得していた。

「ともこお姉さん」につづく