ともこお姉さん

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 今日は土曜日。

 ゆみは、学校がお休みなので、家で兄の隆
と共にのんびりしていた。
 そんなゆみに、智子おねえさんから電話が
かかってきた。

 智子おねえさんは、小学5年生、ゆみより
2つ年上のお姉さん、3年前に親の仕事の都
合で、日本からニューヨークに引っ越してき
て以来、いつも、ゆみと仲良く遊んでくれる
ようになっていた。

 特にゆみが、飛び級で智子おねえさんと同
級生の5年生になってからは、同級生という
こともあり、よく遊ぶようになっていた。
 ただ智子おねえさんのクラスは、日本人が
多く在籍しているクラスで、ゆみとは別のク
ラスなのだったが。

「ゆみちゃん、元気?」
「うん!」
「今日の午後から春子たちと一緒に公園で遊
ぶんだけど、ゆみちゃんも一緒に公園で遊ば
ない?」


 ゆみは、一旦電話を保留にして、隆に遊び
に行ってもいいか聞いてから、

「お兄ちゃんが、行ってもいいっていうから
ゆみも行く」
「じゃ、待ってるね」
「先週、お兄ちゃんに買ってもらったテニス
のラケット持っていてもいい?」
「うん。いいよ」

 ゆみは、お昼を食べて、午後から新しいテ
ニスラケットを持って、智子の待っている公

園に行くことになった。

「行ってきます」

 ゆみは、買ってもらったばかりのテニスの
ラケットを持って、公園に出かけた。
 その日のゆみは、黄色いTシャツに青いジ
ーンズを着ていた。
 ゆみが公園に到着すると、智子お姉さんも
春子お姉さんも、二人とも、もう来ていた。
 智子は、黄色のストライプのワンピースで
後ろにリボンの付いたのを着ていた。


 春子は、Tシャツにデニムのミニスカート
紺と白のニーハイを着ていた。

 ゆみやシャロルは、いつもジーンズやズボ
ンが多くてスカートなどめったに履かない、
いや、ゆみはスカートを持っていない。
 日本人の女の子は皆可愛い服を着ているん
だなあって思っていた。
 ゆみのアメリカ人の女の子の友達も皆、大
概ジーンズやパンツが多かった。

「おっす、遊ぼうか」

 ゆみが、公園に来たのを見つけて、智子お
姉さんが言った。
 智子お姉さんの手にも、テニスのラケット
があった。ゆみが、電話でテニスをしたいっ
て言っていたのを聞いて、持って来てくれた
ようだった。

 学校のちょうど裏側のところに、壁打ちテ
ニスのできるテニスコートがある。
 ゆみ、智子、春子の三人は、学校の裏側の
ところまで歩いていった。
 けど、全てのコートは、休日のテニスを楽


しむ大人たちで埋まっていて、空いているコ
ートは無かった。

「しょうがないね。公園に行って、ブランコ
でも乗ろうか」

 智子が言って、皆は公園の方に戻った。公
園には、ブランコのほかに、上ったり降りた
りできる大きなオブジェなどがあった。
 ブランコよりも、そっちのオブジェのほう
がおもしろい。
 三人は、自然とブランコではなく、オブジ

ェに行って、そこで追いかけっこして遊び始
めていた。
 三人が、オブジェの中で追いかけっこして
遊んでいると、そこにボールが飛んできた。
 野球のボールだった。

「誰のボール?」

 春子は、そのボールを拾って言った。春子
が、ボールを持って立っていたら、ヒデキが
ボールを取りにやって来た。


「お、春子!そのボール、こっちに投げてく
れよ」

 ヒデキは、春子に気づき、大声を上げた。

 スポーツが得意な春子は、ボールをヒデキ
のほうに思いきり投げてやった。

「なんだ。そんなところで野球やっていたん
だ、気づかなかった」
「俺たち毎週、ここに来て野球やっているじ
ゃん」

「ま、そうだったけどね」
「お、良かったら見にくれば」

 ヒデキに誘われて、春子は、智子とゆみに
も声をかけて、皆でヒデキたちの野球を見に
行った。
 ヒデキたち、日本人の男の子たちが集まっ
て野球をしていた。
 ヒデキは、春子たちの中に、ゆみがいるの
を見つけて、俄然やる気が出ていた。

 三人が、ベンチに座って野球を見ていた。


「あれ、誰?ピッチャーやっているの」

 見慣れない日本人の男の子が、ピッチャー
やっているので、春子が聞いた。

「あたしも知らない。見たことない子よね」

 智子も、そのピッチャーを見て言った。

「最近、日本からニューヨークに引っ越して
きたんだよ」

 二人の会話を聞いて、椎名が言った。

 「あたしは、知っているよ」

 ゆみは、智子お姉さんと春子お姉さんに話
した。グランドでピッチャーをやっていたの
は良明だった。

「な、ゆみちゃんと同じクラスだもんな」

 椎名も、春子たちに言った。


「ゆみちゃんと同じクラス?」
「だって、ゆみちゃんのクラスって日本人誰
いないかったんじゃないの」

 春子と智子の二人が、同時に質問した。

「いなかったの。でもこの間、良明君がうち
のクラスに転校してきたの」

 ゆみは、嬉しそうに言った。

「そうなんだ。ゆみちゃんって日本人のクラ

スメートができて嬉しい?」
「それは日本人が同じクラスにいた方が嬉し
いよ。あたしだって日本人だし」
「ずっとアメリカ暮らしだし、アメリカ人の
クラスメートの方がいいのかと思っていた。
日本人よりも」

 春子が言った。

「日本人のお友達ができたら、もっと日本語
うまくなれるもの」
「そうか」


「でも、まだ良明君と日本語でお話したこと
ないんだよね」

 ゆみは、寂しそうに言った。

「そうなの?どうして」
「なぜか良明って、ゆみちゃんの前だと何も
話さないんだよ」

 ゆみの代わりに、椎名が、春子たちに返事
していた。

「???」
「ふーん。なんかよく意味がわからないけど
ゆみちゃんがもし日本語を覚えたいんだった
ら、あたしたちが教えてあげるよ」

 智子が、ゆみに言った。

「うん」

 ゆみは、智子お姉さんに大きく頷いた。

「図書室」につづく