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洋子

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横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第23回

 洋子は、物静かで運動があまり得意そうで
ないおとなしい女の子だった。
 麻美は、最初に洋子と出会ったとき、彼女
に対してそんなイメージを持っていた。

 女の子らしく胸まで伸びた長いストレート
の髪が、麻美にそんなイメージを持たせてい
たのかもしれない。

 ルリ子も、佳代も髪の長さは顎のラインぐ
らいまでだった。雪にいたっては、ベリーシ
ョートで大人っぽかった。
 麻美自身も肩より少し上、肩にかかるかか
からないかぐらいしか髪の長さはなかった。
 最近は、女性でもルリ子や佳代ぐらいの長
さしか伸ばさない女性が多くなってきている
のに、洋子の髪はロングだった。
 誰よりも髪が長く、物静かな印象がそんな
先入観を持たせてしまったのだろう。

 だが、


 お昼にヨットを金沢港内の人工島に着岸し
たとき、麻美がロープを持って飛び降りて岸
に上陸した後、ほかの誰よりも早く麻美に続
いて上陸して、接岸の際にヨットをしっかり
押さえて着岸を手伝っていたのは、洋子だっ
た。

 麻美は、きっと雪が一番に自分に続いて飛
び降りてきて着岸を手伝ってくれると思って
いたのだが、洋子が続いてきたので少し意外
に思っていた。
 それ以来、彼女は、物静かな印象とは裏腹

にけっこう活発なのではないかなと思いはじ
めていた。

 次の週の日曜日、洋子は長い髪を後ろでま
とめて結んで、丈が短めのジャケットに、着
古したジーンズでやって来た。

「なんか先週とイメージ違う。活発そうに見
えるわよ」
「そうですか。普段着ですよ」

 麻美が言うと、洋子は笑顔で答えていた。


 生徒たちにとって二回目のセイリングでは
隆はヨットを海に出し、セイリングを始める
と、海上で生徒たち一人ひとりにステアリン
グ、ヨットの舵を渡して順番にヨットの操船
方法を教えていた。

 初めて握るヨットの舵に最初、生徒たちは
けっこう戸惑っていた。

 ルリ子も舵を取ってみたが、あまりうまく
取れずにヨットが大きく蛇行して走ってしま
っていた。

 麻美と同い年の雪ならば、ほかの生徒より
も年上だし、少しは上手に取れるのではない
かと思っていたが、雪もあまり上手に取れず
に、後ろを振り返って、ヨットの航跡を見る
と、波がS字に大きく蛇行しているのがわか
った。

 そんな中、洋子の番になって、舵を取ると
初めだけほんの少し隆が一緒にステアリング
を握っていたが、しばらくすると一人でも上
手に舵を取れるようになっていた。


「洋子。上手だね」

 隆や麻美はもちろん、ほかの生徒たちから
も舵が上手だと誉められていた。
 ヨットの後ろを振り返って航跡を見ても、
波がまっすぐに直線で引かれているのだ。
 麻美は、その航跡を見て、もしかしたら自
分が初めて舵を握ったときよりも上手かもっ
て思っていた。

 麻美にとって、それよりも意外だったのは
初日のセイリング時のヨットの上では、天然

のルリ子と隆の会話が、ボケとツッコミでま
るで漫才のようで楽しく、二人はきっと仲良
しになりそうと思っていたのだったが、何回
か一緒にヨットに乗っているうちに、隆と洋
子が話の馬があうのか、食事のときなどでも
いつも隣り同士で座っていて、気づけば一番
仲良しになっていたことだった。

第24回につづく


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