ルリ子
ルリ子

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第22回

 ルリ子は、ふっくらとした体型の可愛らし
い女の子だった。
 とてもおしゃべりが好きで、いつも何かし
らおしゃべりをしているとても明るい子だっ
た。

 先週、麻美に習ったばかりのもやい結びの
結び方がよくわからずに、隆にもう一回教わ

っているときも、かん高い笑い声が絶えなか
った。
 ルリ子の結び方の覚えが悪くても、その明
るさに隆も憎めずにロープワークを根気よく
教えてあげられていた。

 今日は、まだ春先で少し涼しいので、お昼
ごはんは船内で食べることになった。
 麻美が中心となって、船内のギャレーでお
昼ごはんを作り、料理を盛り付けたお皿をサ
ロンのテーブルに並べて食べる。


 今日のお昼はパスタだった。

 船では、真水は貴重な資源なので、一滴、
一滴を大事に使いながら、パスタをゆでてい
る。食べ終わったお皿も、バケツに貯めた水
で軽く水洗いをしておいて、マリーナに戻っ
てから、しっかり洗うようにしている。

「いただきます!」

 出来上がったパスタを、テーブルに出して
皆でお昼の食事にする。

 まだ先週出会ったばかりのメンバーたちで
の食事のせいか、皆あんまり話もなく、食べ
ることに集中していたが、ルリ子だけは、常
に楽しそうに、隆とおしゃべりしていた。

 隆も天然というか、ふざけた話をするのが
好きなので、食事の間じゅう、二人だけはキ
ャキャと笑っておしゃべりしていた。

「さあ、セイルを上げようか」

 食事が終わって、マリーナに戻る帰り道、


隆のかけ声で皆は、来るとき初めて覚えたセ
イルの上げ方を復習しつつ、自分たちでセイ
ルを上げている。

 皆の中で一番年長で長身の雪は、ほかの皆
よりも、力もあるらしく、今日がセイリング
初体験だというのに、もうしっかり麻美に習
ってセイルを上げる手伝いをしていた。
 それに対して、ルリ子は力もあまり無いせ
いなのか、あまりセイリングの手伝いとして
は、役には立っていないが、持ち前の明るさ
で皆を和ませていた。

 ルリ子と隆の楽しいおしゃべりで、ヨット
の上のほかの乗員たち皆も、次第に明るくな
って和んできていた。

 船長の隆は、ルリ子はセイリングは皆より
も出来ないかもしれないが、夏に皆でクルー
ジングに行ったときなど、きっとクルージン
グを明るく楽しいものにしてくれるだろうな
と思っていた。

第23回につづく