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ベテランヨットウーマン

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横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第15回

「もうすっかりヨットのベテランだね」

 麻美は、デーセイリングに出かけた後、マ
リーナに戻って来たヨットから降りたところ
で、いつもマリーナで一緒になる年輩のおじ
さんに声を掛けられた。

 そのおじさんも、隆と同じヨット好きで、

ヨットに乗るためなら、冬の寒さも関係ない
人みたいで、毎週のようにマリーナにやって
来ては、自分のヨットを出している。

 マリーナで毎週のように、一緒になるので
麻美もすっかり仲良くなってしまっていた。

 そのおじさんは、ヨット用のオイルスキン
雨合羽の上下に、ヨット用のブーツにしっか
り身を固めた麻美の姿を見て、声を掛けられ
たのだった。


「まだまだ、ですよ」

 ヨットのベテランのおじさんに誉められて
嬉しそうに答えようとしていた麻美より先に
隆がおじさんに答えてしまった。

 おじさんの愛艇は、もう既に船齢30年近
くになる年季の入った32ftのヨットだ。
 日本のヨットデザイナーの元祖、横山晃氏
デザインのヨットだった。

 今のヨットのような洗練された未来的なイ

メージはないが、ウインチの潮の付き方とい
い、木部の磨れ方など、なんともいえない味
が船体のあっちこっちから感じられる実に良
い感じのヨットだった。

 麻美も、隆について一緒に、船内を案内し
てもらったことがあるが、キャビン内の木部
が、ニスでテカテカに磨かれていて、非常に
よく手入れされていて綺麗だった。

「うちも、こんな風に綺麗なキャビンに仕上
げたいわね」


 麻美は、隆に言った。

「ラッコさんは、来週のヨット教室の生徒さ
んは募集するの?」

 おじさんは、隆に聞いた。

 ヨットの人たちは、名前を呼ぶとき、その
人の名前を呼ばずに、その人が所属している
ヨットの船名で呼び合うことも多かった。

 おじさんの愛艇は、「暁」といった。

 麻美も、おじさんの名前は、初対面のとき
に紹介してもらってはいたが、いつも暁さん
と呼んでいるので、本当の名前はすぐには出
てこなかった。

 横浜マリーナでは毎年、春先から秋口にか
けてヨット教室を開催している。
 そのヨット教室に参加する生徒さんを、市
の広報誌で広く一般から募集しているのだ。
 マリーナとしては、ヨット業界の活性化、
ヨット人口の普及のために毎年開催している
のだった。


 ヨット教室に集まった生徒たちには、横浜
マリーナとして初日だけは一日しっかりと、
マリーナのクラブハウスで学科教習を行う。
 学科教習が終わると、その後は、実地教習
と称して、マリーナに停めている各ヨットに
振り分けられて、それぞれのヨットのオーナ
ーさんが、自分のところに振り分けられた生
徒たちを、一人前のヨットマンになれるよう
に、クルーとして育て上げているのだ。

 隆のヨット、ラッコでも、来週のヨット教
室では生徒さんを募集するつもりでいた。

 横浜マリーナでは、大人のための「クルー
ジングヨット教室」として、毎年、市の広報
誌上でヨット教室を受講する生徒さんを募集
しているので、ご興味があったら問い合わせ
てみてください。

第16回につづく


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