館山の町

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第111回

 隆たちは、食事のあと少し館山の町を歩い
てみることになった。

 ラッコの船体側面に付いているドアの鍵を
締めると、麻美は小さなバッグを持って港を
出た。

「あの山の上に、見えるお城が館山城だよ」

「本当だ。お城って、私、一回も中に入った
ことないよ」

 ルリ子が言った。

「時間があれば、あそこまで行ってみたいけ
ど、けっこう距離があるからな」

 館山城は、港からちょっと離れているので
今回は行くのをあきらめて、駅前に行ってみ
ることになった。


 駅までの道は、けっこう広めの舗装された
道路が海岸沿いに続いている。

「お店とかビルは、あんまり無いけど、館山
の町って、けっこう栄えているのね」
「うん。まあね、って麻美は、どこと比べて
栄えているって言っているの?」
「え、前に行った保田とか勝山の港町よりは
同じ千葉でも都会かなって思ったの」

 館山の町、港のすぐ側には、わりかし大き
なスーパーマーケットもあった。

 今回の旅は、そんなに長くないし、今朝、
横浜マリーナから来たばかりなので、まだ食
料も船にいっぱい積んであって、買い出しの
必要はないが、長めのクルージングのときに
は、買い出しが便利な港かもしれない。

 駅前に到着した。

 駅も、勝山の駅よりは、はるかに大きな駅
舎が建っていて立派だった。

 隆たちは、ぶらぶらと横に長く並びながら


駅舎の中に入って、案内表を眺めていた。

「東京からだと、ずいぶんたくさんの駅に停
まるんだね。私たちって船でかなり、遠くま
で来ていたんだね」
「本当だ。館山って鴨川とかの近くなのかな
そしたらヨットで、ここから鴨川とかも、わ
りとすぐ行けるのかな?」

 佳代が麻美に聞いた。

 麻美も、よくわからなかったので、隆のほ

うをじっと見た。

「鴨川か。ヨットでも、ここから行けないこ
とはないよ。行けないことはないけど、湾を
出たら、洲崎の灯台を周って外房のほうに出
ないと行けないから、帰りが大変だよ」

 隆は答えた。

「それに外房は、外海、太平洋に面している
から、天候によっては、けっこう波とか風も
あるよ」


「そうなんだ。それじゃ、ヨットは、ここに
停めて、電車で行く方がいいかもね」

 皆は、駅舎を出た。

「さあ、向かいのところにあるお風呂屋さん
に行ってから、船に戻ろう」

 隆が言って、皆は、お風呂に入るために駅
前の風呂屋に入って行った。

第112回につづく