式根島の街
式根島の街

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第59回

 式根の街は、若者で大混雑だった。

「すごいね!」

 麻美は、佳代の手を引きながら、叫んだ。

 式根の街のメイン通りは、まるで本当の原
宿の竹下通りを歩いているように、人がたく

さん溢れていた。

「大混雑!式根島ってこんなに人がいるんだ
ね」
「この島は人口が多いのね」
「夏だけだよ。夏休みの間だけ、こんなにい
っぱい人が遊びに来ているんでしょう」

 隆は、洋子といっしょに、麻美の後ろを歩
きながら、答えていた。

「地元の、島の人じゃないのね」


「それは違うでしょう。皆、どう見ても東京
原宿とか島に遊びに来た人ばかりでしょう」
「皆も、迷子になるから、しっかり手をつな
いでいるほうが良いかもよ」

 佳代と手をつないでいる麻美が、後ろを振
り返って、皆に言った。

「大丈夫だよ。もし迷子になったら、港のヨ
ットに戻ればいいだけだから」

 かわいい派手なワンピースが、たくさん店

頭に並んでいるお店があった。
 麻美は、佳代を連れて、そのお店の中に入
ってみた。店の中は、若い女の子たちでいっ
ぱいだった。

 ほかのラッコのメンバーたちも、特にその
店の服に興味あるわけではなかったが、麻美
の後ろに連なって店内に入った。

「すごいね。この混雑は、お店の中までずっ
と続いているんだ」
「随分、かわいい服がいっぱいあるわね」


 麻美は、佳代を連れて、店内の奥へと進ん
でいく。

「この店の服って、たぶん、ルリちゃんにも
若すぎるんじゃない?」
「ぜったい無理」

 ルリ子が麻美に答えた。

「うん。私にも、さすがに着れないかも」

 佳代も麻美に言った。20代でも着れない

ような10代の子中心の服が多かった。

「洋子も、こういう服は着ない?」
「私?私は、ぜったい無理!」

 隆に聞かれて、ルリ子よりも、少し年上の
洋子が答えている。

「こんなの可愛いかな」

 洋子よりも、さらにずっと年上の麻美が、
ワンピースを手に取って、佳代の体に当てな


がら、はしゃいでいる。

「麻美さんなら、雰囲気が若いから、この店
の服も似合いそう」
「そお?それじゃ、佳代ちゃんとお揃いで買
ってしまおうかな」

 ルリ子に褒められて、麻美は、嬉しそうに
佳代と一緒にワンピースを選んでいた。

「麻美さ、佳代とお揃いのワンピース着ても
良いんだけど、周りから見たら、仲良し友だ

ちのペアルックでなくて、お母さんと娘の親
子ペアルックにしか見えないと思うよ」
「うるさいな」

 麻美は、せっかく、ルリ子に褒められて、
気持ち良くなっていたのに、隆に鋭い突っ込
みを入れられてしまっていた。

第60回につづく