横浜へ

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第94回

 昨日は、遅くまでヨットで飲んでいたので
隆は、まだ眠そうだった。

 遅くまで飲んでいたからというよりも、朝
起きた時間が、まだ5時というのもあったか
もしれない。

 波浮から直接、横浜を目指すよりは、岡田

から横浜のルートのほうが距離が短くなると
はいえ、出来るだけ、早く出航したほうが、
それだけ早く横浜マリーナに戻れる。
 早めに家に帰れれば、明日の仕事に備えて
ゆっくりだってできる。

「また、朝ごはんは、出航してから海の上で
食べることにしようか?」

 麻美は、隆の頭の寝ぐせをブラシで直して
あげながら聞いた。


 隆は、麻美の質問に黙って頷いていた。

「出航の準備できたから、いつでも出発でき
るよ」

 デッキから船内に戻って来た洋子が、隆に
報告した。

 洋子は、皆よりも少し早めに目が覚めてし
まったので、先に起きて、セイルの準備など
いつでも出航できるように準備していたのだ
った。

「それじゃ、出航しようか」

 隆は、自分の髪をとかしてくれていた麻美
のブラシの手を止めさせて、洋子とデッキに
出た。

「麻美ちゃんが、隆さんの髪をとかしてあげ
ていたの?」
「ヒューヒューだからよね」

 雪の質問に、麻美より先に、ルリ子が、指
で口笛を吹くマネをしながら、雪の質問に答


えていた。

「っていうか、隆の寝ぐせが、あんまりにも
ひどかったからね」

 麻美は、ルリ子にからかわれて、少し恥ず
かしそうにしながらも、嬉しそうに答えた。

「ルリちゃんの髪もとかしてあげようか」

 髪をとかしていた隆が、デッキに出て行っ
てしまって、手持ちぶさたになった麻美は、

手にしていたブラシで、今度は、ルリ子の長
い髪をとかし始めた。

 ルリ子の髪は、肩の下辺りまで伸びている
ので、とかしがいがあった。

「ありがとう」

 髪をとかしてもらえて、気持ち良さそうに
しながら、ルリ子は麻美に言った。

 後ろから、麻美に髪をとかしてもらいなが


ら、ルリ子は、ギャレーで朝ごはんのフレン
チトーストを焼いていた。

「あ、動いた。出航したね」

 船が揺れて、体のバランスを失った麻美は
ルリ子の背中に手を捕まりながら言った。

 ラッコは、マリオネットや海王と共に、横
浜の、横浜マリーナを目指して岡田港を出港
していた。

 三艇並んで、岡田港の港を出港した。

 三艇とも、目的地は同じ三艇のホームポー
トである横浜マリーナだ。

第95回につづく