トイレでおしっこする

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

 朝ごはんを食べ終わると、私はコップに水
次の日の朝、目が覚めた。

「おしっこ、行きたい」

 朝起きると、おしっこに行きたかったので
トイレに走った。トイレに座ると、おしっこ
が出て、ホッと、スッキリした。
 いや、実際には、トイレにおしっこは出て
いない。身体の中にクダが通っていて、その
クダを通って、外のおしっこの袋の中に、お
しっこは出ていたのだった。

 それなのに、おしっこに行きたくなると、
どうしてもトイレに行ってしまうのだ。

「そうか、おしっこは、どうせ袋に出ている
んだよな」

 トイレに行った後で、そのことに気づかさ
れてしまうのだった。

「とりあえず、朝ごはんだ」

 朝ごはんをしっかり食べないと、食後の薬


が飲めない。朝の食事の準備をして、朝ごは
んを食べた。
 朝ごはんを食べることで、はじめて朝の食
後となって、食後のユリーフの薬を飲めるの
だった。

「え、もうこんな時間か」

 記事を書くのに集中していたせいか、一つ
の記事を書き終わったとき、気づいたら既に
時間は12時半をとっくに過ぎて、1時過ぎ
になっていた。

「行ってきます」

 私は、朝ごはんを食べ終えると、会社に出
かけた。会社に行く電車の中で、なんかもぞ
もぞして変な感じだった。
 おしっこがしたいというほどではないのだ
けど、なんかもぞもぞするのだった。
 おそらく、おしっこが少し外に出ているの
ではないだろうか、チョロチョロと流れてい
るようなそんな感じだった。

おもらし?


 いや、おもらしでは無かった。おしっこは
外に出たところで、クダを通って、ちゃんと
おしっこ袋の中に出ているだけなのだ。
 おしっこは、勝手にクダを通って、袋の中
に落ちてしまうのだ。トイレに行きたいとか
全く気にする必要などないのだ。

「なんだか便利だな」

電車の中で、そう思った。

 本当ならば、電車の中で、おしっこがした

くなったら、どこか途中の駅で1回電車を降
りて、トイレを探さなければならない。
 それが、トイレなど探す必要もない。電車
だって、途中の降りたくもない駅で降りなく
たっていいのだ。
 おしっこは、したくなれば、勝手に百均の
バッグの中に入っている袋の中に出てくれる
のだ。こんな便利なことはない。

「あ、トイレ行ってこなきゃ」

 電車の中では、こんな便利なことはない、


と思っていたのに、午後になると、やっぱり
おしっこがしたくなると、なんだかもぞもぞ
し出して、普通にトイレに行ってしまって、
トイレで用を済ませてしまうのだった。

 おしっこは袋へと勝手に出て行ってしまう
のにだ。
 それはわかっていても、どうしても、もぞ
もぞし出してトイレに行ってしまうのは、な
んでなのだろうか。

「いただきます」

 夜、家に帰ってきて、夜ごはんの準備をす
ると、出来上がった夜ごはんを食べる。
 もちろん、会社から帰ってくると、病院で
の決められた規則正しい食事の時間である夜
6時半は、もうとっくの昔に過ぎてしまって
いるから、時間通りでなくても仕方ないこと
ではないか。

「ごちそうさま」

 時間通りに食事ができないことは、はなか
ら諦めていた。


 夜ごはんの食事が終わると、待ってました
とばかりに、さっそく夜のユリーフの薬、1
錠を水で飲んだ。
 今の私にとっては、夜ごはんの食事が楽し
みというよりも、夜の食事の後のユリーフの
お薬のために、夜ごはんを食べているような
ものだった。

 毎朝と毎晩、ちゃんと食後には、ユリーフ
のお薬を1錠ずつ飲まなければ、前立腺はち
っとも小さくならず、いつまで経ってもおし
っこの袋をぶら下げ続けていなければならな

くなってしまうではないか。

 なんとなく私の日々の生活すべてが、おし
っこの袋とともにあるようになってしまって
いた。また、いつかおしっこの袋が無い生活
に戻ることは本当に出来るのだろうか。

 夜の食事が終わって、夜の分のお薬も飲み
終わった。
 いまの時刻は、何時だろう。時計の時刻を
見ると、まだ夜の9時前だった。
 普段ならさすがに、まだ眠るには早い時刻


だった。いつものように、テレビのドラマで
も視ながら、パソコンでブログでも書くか。

 だが、なんとなくパソコンを立ち上げて、
ブログを書こうという気にもなれなかった。
 それでは、テレビでもつけて、ドラマでも
視るか。テレビのリモコンを操作して、テレ
ビをつけた。

 いつも毎週、楽しみにしているテレビの連
続ドラマ、連ドラが始まっていた。
 いつものように、目はテレビの連続ドラマ

の画面を眺めているのだが、いつものように
は、なぜかドラマに集中できない。

「なんとなく、今期の、このドラマは、あま
り面白くないものな」

 ドラマに集中して見れないことを、ドラマ
の内容のせいにしてしまっていたが、実は、
おしっこの袋が自分の側にくっついて、ぶら
下がっているのが気になって、ドラマを集中
して見ていられないのだった。


「もう寝るかな」

 時刻は夜10時前だった。病院で入院して
いたら、とっくに消灯時間で寝ているはずの
時間だった。
 いつもの普段通りの生活だったら、ぜんぜ
ん寝るには早すぎる時間なのだが、なんとな
く眠気もあるし、もう寝たい時間だった。

「そうだよ、私は病人なんだよ」

 私は、Sカンにぶら下がったおしっこの袋

を見ながら、自分に言い聞かせた。
 そして、まだ途中のテレビの連続ドラマの
スイッチを切ってしまい、ベッドに入ってし
まった。

「どうしてもトイレでおしっこ
してしまう」につづく