どうしてもトイレでおしっこしてしまう

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

次の日の朝、目が覚めた。

「トイレに行きたい」

 夜中は、ずっと寝ていたわけだが、おしっ
こは寝ている間も、クダを通って、身体の外
に出て、おしっこの袋の中に入っているので
朝起きても、トイレなど行く必要などないの
だった。

だけど、どうしても、身体は、おしっこをし
たい気になってしまって、トイレに座らなけ

れば満足できないのだった。

「食後は、ユリーフを飲まなくては」

 朝ごはんを食べ終わると、私はコップに水
道水を汲んで、ユリーフのお薬を1錠袋から
出して飲んだ。

 そして、おしっこの袋を大きめのプラスチ
ックで出来たエスカンでぶら下げ、エスカン
の袋がぶら下がっていない側を、腕に引っか
けて、そのまま部屋の中を移動しながら過ご


した。

 身体の中に、クダを通して、おしっこの袋
をぶら下げてから、そろそろもう1週間ぐら
い経つというのに、未だに、おしっこの袋に
慣れない。
 いや、おしっこの袋には慣れたというより
も、エスカンに引っかけてぶら下げて持って
いるだけなので、どうということはない。
 問題は、身体の中を通っているクダの方だ
った。クダが身体に通っていることに、どう
しても慣れないのだ。

「なんか、へんな感じがするな」

 身体の中を、クダが通っているからといっ
て特に何か痛みがあるわけではなかった。
 痛みは、ぜんぜん無いのだが、なんかクダ
が通っているのが変な感じなのだ。
 ちょうど身体の下半身、尿道のある辺りの
上のほう、下半身のすぐ真上の、自分の肉体
の何もない空間というか、空気のある場所、
なんか尿道のすぐ上辺りがかゆいというか、
ともかく変な感じなのだ。


 もちろん、身体の上、自分の肉体がなにも
ない空間なので、そんなところを指で掻いて
みたところで、掻けるわけでもない。
 掻いたところで、その辺りにあるはずの目
に見えない空気が少しかき乱されるだけだ。

「なんか、かゆっぽい」

 尿道の上辺りの、なにも自分の肉体がない
空気中がかゆいのだ。

「早く、このおしっこの袋外したいな」

 私は、その辺りが、かゆい感じになる度に
そう思うのだった。そして、おしっこの袋が
早く外せるように、しっかり前立腺が小さく
なるようにと、病院で処方されたユリーフの
お薬が入った袋を見つめてしまうのだった。

 もちろん、ユリーフの薬を眺めたからとい
って、朝と晩の食後しか飲めないユリーフを
そのほかの時間に飲めるわけもないし、時間
外に多く飲んだからといって、前立腺が余計
に小さくなるとも思えなかったが、1時間お
きに、どんどん飲み続けたくなるのだった。


 そして、またトイレに行き、便座に座って
クダを伝って、外のおしっこの袋の中に、お
しっこを出すのであった。

「おしっこ流すか」

 私は、どうせ、おしっこの袋に直接、おし
っこは出るのだから意味はないのだが、いち
いちトイレに行ってから、おしっこをした後
で、立ち上がって、腕にぶら下げているおし
っこの袋を持って、その袋の手前に付いた蛇
口を開けて、そこから中に貯まっているおし

っこをトイレの中に流すのだった。

 夜ごはんの時間だ。

「いただきます」

 その日の夜ごはんを食べ終わると、夜の分
のユリーフのお薬を飲んだ。

「あと1週間」につづく