あと1週間

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

 次の日の朝、目が覚めた。

「ごはんです」

 朝ごはんを食べて、食後のユリーフのお薬
を飲む。

「トイレ行ってこよう」

 また、この日も、どうせ、おしっこ袋に直
接、おしっこは袋に出ているのだから、全く
意味のないことはわかっているのに、どうし

てもトイレに行って、便座に腰かける。

「あと1週間か」

 便座に腰かけながら、考え事をしていると
急にそのことに気づかせられた。そう、あと
1週間なのだ。
 気づけば、おしっこの袋を病院で取り付け
られてから、もう1週間が過ぎてしまってい
たのだった。

 残り1週間しかないのだ。


 病院を退院してからも、なんとなく、どこ
へ行くのにも、犬の散歩のように、自分の身
体から飛び出ているクダがくっついていて、
その先には、おしっこの袋がしっかりぶら下
がっている。
 なんとなく、身体が怠い。なんだか、やる
気も出て来ない。表を歩いているときも、の
らりのらりと、周りの人たちよりも歩くスピ
ードが落ちてしまう。

「自分は、病人なのだから仕方ないさ」

 周りのほかの人たちが、自分のことを追い
抜いて、どんどん先へ歩いていってしまう姿
を眺めながらも、私は、のんびり、だらだら
歩いてしまっていた。

「もう夜も遅いし、いっしょに寝ようか」

 夜だって、夜の9時を過ぎると、愛猫の顔
を見つめながら、そうつぶやいて、パジャマ
に着替え、部屋の明かりを消して、布団の中
に入ってしまう。
 すると、それを見た愛猫が、布団の上に上


がってきて、布団の上、ちょうど私のお腹の
上辺りで、一緒になって目をつぶって丸くな
って寝てしまっていた。
 夜9時過ぎに寝てしまうなんて、大人とし
ては、ぜんぜん早すぎるというのは、わかっ
ていた。

 しかし、

「私は病人なのだ。病院で入院していれば、
夜9時は消灯で、皆寝る時間だ。ぜんぜんお
かしくない」

私は、自分にそう言い聞かせて、眠ってしま
っていた。

 要は、ぜんぜんやる気の出ないのだ。

「頑張らなきゃいけないな」

 私は、退院してからの1週間を反省した。
というよりも、あと1週間しかないのだ。そ
れまでに、本当にあと1週間で、おしっこ袋
を外したら、ちゃんと、おしっこが出るよう
になるのだろうかという心配、不安の方が大


きかった。

「なんか、もっとユリーフを飲みたいな。朝
と晩の食後だけでなく、朝と晩、それに昼の
食後にも、ユリーフの薬を飲んだら、もっと
おしっこが出るようにならないのか?」

 私は、そう思うのであった。

 あと1週間というのは、どういうことなの
かと言うと、病院で入院しているときに、泌
尿器科の先生に会ったときに、おしっこの袋

をぶら下げたまま、退院しましょうと言われ
たあの日。

 あの日から数えて、あとは外来で、処方し
たお薬を飲みながら、おしっこが出るように
治していきましょうと言われたのだ。

 その外来で、おしっこが出るかどうかの確
認する日が、2週間毎、つまり1週間過ぎた
ので、あと1週間だ。

「次は、2週間後の木曜日に、病院に来て下


さい」

 そう泌尿器科の先生に言われていたのだ。

「2週間後の木曜日は、来る時間はどうした
らいいですか?」
「それでは、朝一番で診てほしいです」

 私は、そのとき泌尿器科の先生にそう答え
ていた。朝一番に診てもらえれば、そのまま
すぐ会社に行けると思ったのだ。
 2週間後の木曜、朝9時に次の診察の予約

を入れてもらっていたのだった。

「来週の木曜日か」

 私は、つぶやいた。

 私は病人だ、私は病人だと、だらだらと過
ごしているうちに、1週間があっという間に
過ぎてしまい、次の診察日まであと1週間に
迫ってしまっていたのだった。

「おしっこ出るようになっているのかな?」


 おしっこの袋と自分の身体を結んでいるク
ダを眺めながら、私は思った。
 毎日、欠かさず朝と晩の食後には、ユリー
フの薬を1錠ずつだけはきちんと飲んできた
のだが、ちゃんと出るようになったのか。
 ちゃんと薬だって飲んでいるのだし、ぜっ
たいにおしっこは出るようになっているはず
だ。私は、自分にそう言い聞かせていた。

「ごちそうさまでした」

 そして、その日の夕食も食べ終わると私は

またここ最近のいつものように、ユリーフの
お薬を1錠、お水で飲むのであった。

「ぐうたらのトイレ」につづく