ぐうたらのトイレ

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

 次の日の朝、目が覚めた。

「ごはんです」

 朝ごはんを食べ終わって、朝のユリーフの
お薬を1錠飲んだ。
 そして、また意味のないことは、わかって
いるのだが、おしっこがしたくなり、トイレ
に駆け込む・・わけではなかった。

「おしっこ出るかも。まあ、でもトイレに行
かなくても、勝手にぶら下がっているおしっ

この袋の中に、おしっこは出ていくんでしょ
う。わかっていますよ」

 この頃になると、少し前まで感じていた違
和感も消えかかってきていた。
 身体の下半身、その上辺りの何もない空間
上に感じる、なんともいえないかゆさも、そ
れもほとんど感じなくなっていた。

 パソコンに向かって仕事をしているときで
も、病気になる以前だったら、このぐらいパ
ソコンに向かっていたら、おしっこ、トイレ


に行きたくなっていたであろう時間。
 病気になった後でも、なんとなくこのぐら
いパソコンに向かっていたら、おしっこに行
きたい感じがして、トイレに行っていた時間
も、特に気にしなくなっていた。

「ああ、おしっこしたいのね。どうぞ、勝手
に袋の中にして下さい」

 そんな感じで、おしっこには、自分の身体
にぶら下がっているおしっこ袋の中に、勝手
に投入してもらって、自分は関係ない顔で、

パソコンに向かって、マウスを動かし作業を
続けていた。

「なんか面白そうなバラエティ番組をやって
いるじゃん」

 なにげに点けたテレビのバラエティ番組を
視ているときも、だらーんとソファに寝転が
りながら、テレビの画面を延々と見続けられ
るようになっていた。

「あ、おしっこ行きたいのか」


 私は、テレビのバラエティ番組のCM中に
自分の身体から出ているクダを眺めて、その
透明なチューブの中を、おしっこが袋に向か
っていくのを、ただ眺めていた。

「おしっこしたいのか。まあ、おしっこさん
勝手に、おしっこ袋の中に流れていってくだ
さいよ」

 私は、テレビのバラエティ番組を眺めなが
ら、自分のおしっこに向かって、そうつぶや
いているだけだった。

「そろそろ夜の9時だな」

 消灯の時間だ。もう寝ようかな、そう思っ
てパジャマに着替えると、ベッドの毛布の中
に入る。

「あ、寝る前に、おしっこに行っておかなけ
れば夜に行きたくなってしまう」

 なんて思うことも無くなった。

「袋がくっついているのだから、おしっこは


トイレになんか行かなくても勝手に袋の中に
流れていってくれるんだよね」

 いつしか私は、そう思うようになってしま
っていた。そして、布団に入って、愛猫とと
もに眠ってしまうのであった。

 夜中に、ふと目が覚めた。

「なんだか、ちょっとトイレに行きたいよう
な・・。おしっこがしたいような気がする」

 そう思ったら、例え意味が無くても、以前
だったら、おしっこの袋を片手に持ったまま
トイレに行って、そこでトイレに腰かけてか
ら、おしっこをしていたというのに、今は、

「ああ、大丈夫。袋の中にしちゃえ」

 ベッドの脇にエスカンでぶら下がっている
おしっこの袋の方を、チラッと見るだけで、
そのまま目をつぶって、再び眠りについてし
まうのであった。
 なんだか、トイレをするのが、どんどんぐ


うたらになっていってしまっているようだ。

「おしっこは出るように
   なっているはず」につづく