館山

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第109回

 三連休の土曜日の朝、ラッコのメンバーは
横浜マリーナに集まっていた。

「おはよう」

 皆が集まると、ラッコが置いてある艇庫の
中に行き、出航の準備を始めた。

「ルリちゃん、今日どこに行くかちゃんと知
っている?」

 洋子は、ブームの上のメインセイルをルリ
子と一緒に準備しながら、ルリ子に聞いた。

「千葉でしょう。千葉の勝山」

 ルリ子が答えた。

「それは明日行く場所でしょう。今日は館山
に行くんだよ」


「館山?」
「館山は、千葉の房総半島の先端のところを
少し内側に入ったところにある町なんだよ」

 ルリ子は、千葉の勝山に行って翌朝、レー
スに出場している暁さんの応援をするとしか
聞いていなかった。

「レースは日曜だから、今日は、館山に行っ
て、そこで一泊してから、勝山に戻ってレー
ス観戦しようと思うんだ」

 隆が、ルリ子に説明した。

 レース観戦が終わったら、そのまま勝山の
漁港に入れて、そこで一泊して次の日の日曜
に、横浜マリーナに戻って来ようという予定
だった。

「館山か。初めて行くところだから、どんな
ところか楽しみ」

 ルリ子は、隆に言った。


 館山は、房総半島の一番最先端にあるので
横浜から行こうと思うと、けっこう遠く距離
があった。

 ラッコは、マリーナスタッフにクレーンで
降ろしてもらうと、出航した。

 横浜マリーナを出ると、まずは、三浦半島
の観音崎を目指すことになる。ここまでは、
千葉の保田や勝山に行くルートとまったく同
じルートだった。

 観音崎を越えて、久里浜の先まで行ったと
ころで、千葉を目指して東京湾を垂直に横断
することになる。

 大型のタンカーや貨物船、旅客船の合間を
ぬって、横断し終わったら、さらに房総半島
沿いに南下していく。

 やがて、房総半島の先に大きな白い灯台が
見えてくる。

 これが洲崎の灯台だ。


 灯台の手前の湾を左折して内側に入って行
くと、その湾の一番内側、そこの右側に館山
の漁港がある。

 ラッコは、その漁港に入港すると、手前の
ところにある岸壁に停泊した。
 館山の漁港は、漁港といっても、漁船だけ
でなく、地元のヨット乗りが所有しているヨ
ットも何隻も停泊していた。
 いわゆるマリーナと漁港の合わさったよう
な漁港だった。

「自然の中にあって、良いマリーナね」

 入港すると、麻美は佳代に言った。

「きれいな海」
「横浜マリーナの在るところの海は、汚いも
のね」

第110回につづく