隆のプラン

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

「そういえば、もうじき授業が終わる時間だ
けど大丈夫?」

 ゆりこ先生は、教職員室の壁にぶら下がっ
ている大きな時計を確認してゆみに言った。

「あ、いけない。授業終わる前に、図書室の
廊下に戻らなきゃ」

 ゆみは、良明の手を引いて、先生に別れを
言って、職員室を出た。

「図書室に戻ったら、二人で先生にごめんな
さいしようね」

 ゆみは、良明に言った。帰りは、良明も壁
に貼られた紙などをいたずらせずに、黙って
ゆみに手を引かれ、戻っていった。

「それじゃ、日曜の詳細は、隆君にも話して
決めておくわね」

 図書室に戻っていく二人の後ろから、ゆり
こ先生は言った。


「先生、ごめんなさい」

 ゆみは、先生に謝った。

 ゆみたちが、図書室の前の廊下に戻ったそ
の1分か2分ぐらいで、図書室のドアが開い
て、授業の終わった生徒たちがちょうど出て
きたところだった。
 まさに、ぎりぎりセーフ。

 もし授業の終わる前に戻って来れなかった
ら、先生に、どこを歩き回っていたのってま

た怒られるところだった。
 ゆみは、良明の手を引きながら、図書室の
中に入ると、先生のところに謝りに行った。

「先生、ごめんなさい」
「もう図書室では、騒いだらだめよ」

 先生は、そんなに怒ることなく、ゆみのこ
とを許してくれた。

「大丈夫?」


 ゆみが謝るところを、入り口で、心配そう
に眺めていたシャロルがやって来た。

「うん。ありがとう」

 ゆみは、先生にバイバイしてから、シャロ
ルと良明の三人で揃って、図書室を出た。

「ゆみちゃん、クラスにいい日本人のお友達
が出来て、よかったわね」

 先生は、良明のことを言った。

「はい!」

 ゆみは、元気よく嬉しそうに答えた。


「ゆみ、今度の日曜に、ゆりこ先生のう
ちに行くのか?」

 その日の晩、夕食のとき、隆は、ゆみ
に言った。

「うん」


 ゆみは、頷いた。そして、その日に学
校であったことを、図書室で怒られたこ
ともぜんぶ含めて隆に報告していた。
 小さい頃から病弱で運動が苦手だった
ゆみは、学校でも机に座っていることの
方が多く、あまり先生に怒られたことが
無かったので、きょう学校で怒られたこ
とも新鮮だったのだ。

「先生の家に行くこと。ゆりこ先生から
お兄ちゃんは聞いたの?」
「そうだよ」

 隆は、答えた。

「本当は良明は、誰か男の子のお友達と
一緒に、ゆりこ先生のうちに行くはずだ
ったんだぞ」
「あたしが男の子になるから」
「なれるっかよ」

 隆は、苦笑した。

「良明が、学校では、あんまりおしゃべ
りとかしないって聞いたから、ゆりこ先


生と誰か日本人の男の子のお友達と遊び
に行ったら、仲良くなれて学校でもおし
ゃべりするようになるのではないかなっ
て提案だったのに」

 隆は、提案が予定通りにいかずに、ち
ょっと残念そうだった。
 ゆみは、隆のその様子をみて、

「もしかして、ゆりこ先生のうちに遊び
に行くのって、お兄ちゃんが先生に話し
ていたの?」

「そうだよ」

 隆は、ゆみに答えた。

「ゆりこ先生の家」につづく