夏の定番料理

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第70回

 長く楽しかった夏のクルージングも終わっ
てしまった。長いようで、けっこう早くに終
わってしまった。

 そう感じていたのは、幼少の頃からヨット
に乗っているヨット好きの隆だけかと思って
いたら、ラッコのメンバー全員がそう感じて
いた。

 今日の昼の食事は、そうめんだった。

 この夏、ヨットで、そうめんを作るのは、
初夏から数えるともう何十回目かだ。

 ラッコは、毎週のように、ヨットを出して
いる。横浜マリーナに保管しているヨットの
中で出艇率では断トツナンバー1かもしれな
かった。

 暑くなってきてからは、そのほとんどの昼
ごはんに、そうめんを作っていた。


 ラッコ以外のほかのヨットでも、多くのヨ
ットは、夏になると、そうめんを作っている
船が多かった。

 本当は、そうめんは、作るときに、茹でる
のに水を大量に使うから、水が貴重なヨット
にとっては、不向きな料理のはずなのに、小
さなギャレーでの料理のし易さからか、多く
のヨットでは、夏になると、そうめんを作る
ことが多かった。

「ルリちゃん、そうめんのつゆを作ってくれ

る?」
「はーい」

 ルリ子は、麻美に言われて、皆の分のそう
めんのつゆを薄めて、作っている。
 佳代は、そうめんに入れるワサビを、丁寧
に削っていた。

「最近、ヨットに来ると、そうめんばかり食
べているよね」
「そうね。夏は暑いからね」
「なんか毎週、そうめんを作っているから、


私、そうめんだけは、上手にお料理できるよ
うになったかも」

 洋子が、話している。

「よかったじゃない。これで、いつでもお嫁
に行けるね」
「うん。でも、そうめんしか作れないお嫁さ
んだけどね」

 皆が、笑った。

「お昼、できました!」

 麻美の声で、皆がラッコのキャビンの席に
ついた。ラッコのメンバー以外には、マリオ
ネットのメンバーも一緒に、ちゃっかりラッ
コのキャビンの席で食事をしている。

 夏のクルージング以降は、ラッコとマリオ
ネットのメンバーは、すっかり仲良くなって
しまっていた。

 いつも一緒にヨットを出して、お昼になる


と、隣り同士で船を停泊して、お昼ごはんを
食べていた。


麻美の3分そうめんレシピ

サッパリしてて美味しいです〜

 材料は、そうめんに、そうめんのつゆ、ネ
ギ2、3本、すりごま、梅干し、それにショ
ウガです。

 材料は全て、横浜マリーナ前のショッピン
グスクエア内にあるスーパーマーケットで調
達できます。

「ネギ何本いる?」
「1本。あ、その束、1セットでいいわよ」

 ルリ子は、麻美に言われて、2本1束にな
っているネギを買い物カゴの中に入れた。

「そうめんのつゆは、どれにする?」
「どれにしようか?」


「今日は、中華風にしてみない」

 洋子と雪は、そうめんのつゆが売っている
棚の前で、いろいろなメーカーのそうめんの
つゆボトルを見比べていた。

「あと、ショウガがいるね」

 麻美に言われて、佳代がショウガを買い物
カゴの中に投入する。

「すりごまは?」

「すりごまのボトルは、まだ船の中に入って
いるから大丈夫よ」

 麻美は、佳代に答えた。

「あ、梅干しは、朝出てくるときに家の冷蔵
庫から持ってきた」

 麻美は、つけ加えた。

 買い物を終えて、船に戻ると、ラッコのヨ
ットのギャレーには、ちゃんとすりごまの入


ったボトルが棚の中に収まっていた。

「あと、梅干しでしょう」

 麻美は、自分のバッグの中からタッパーに
入った梅干しを取りだして、ギャレーの端に
付いている冷蔵庫の中にしまった。

それでは作り方です~

1ギャレーの下の戸棚に入っている大きめの
 鍋を取り出す。

2鍋に、プラスチックの水のポリタンクから
 水を注ぐ。
3お鍋をギャレーのガスストーブ、コンロに
 かける。
4お鍋の水が、お湯に沸騰してくる。
5そうめんを茹でる。

※そうめんは茹ですぎないように1分ぐらい
でザルに上げましょう。

「ルリちゃん、そうめんを上げるから」
「はーい」


 ルリ子は、麻美に言われてザルを持って表
のデッキに出る。
 麻美も、茹で上がったそうめんの入った熱
いお鍋を持ってデッキに出る。

「大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」

 ルリ子がデッキから腕を伸ばして、海上に
ザルを持っている。麻美は、ルリ子の持って
いるザルの中に、茹で上がったお鍋のそうめ
んを開ける。

 お鍋のそうめんは、ルリ子が両手で抱えて
いるザルの中に落ちる。
 そうめんと一緒にお鍋に入っていた熱いお
湯だけは、ザルを通って、海の中に落ちてい
ってしまった。

「OK!」

 そうめんだけが残ったザルを持って、ルリ
子はキャビンの中に戻っていく。
 麻美も、空っぽの鍋を持って戻っていく。


6ザルのそうめんの周りに砕いた氷を投入。
7刻んだねぎ、梅干しも散らす。
8棚のすりごまのボトルもそうめんにふりか
 ける。
9生姜をすりおろして、カップのそうめんの
 つゆの中に入れる。

 これで、夏のそうめんの完成です。

「それでは、頂きましょうか」
「いただきます!」

 麻美の合図で、コクピットにいたラッコの
メンバーたちは、そうめんを食べ始めた。

第71回につづく