セールトレーニング

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第102回

 ルリ子は、なんとなくもやい結びが出来る
ようになってきていた。
 暁の若い男性クルーに教えてもらえたおか
げだ。

「もやいを結べるようになったか?」
「はい!」

 ルリ子は、望月さんに聞かれて、自信たっ
ぷりに答えた。

「それで、そっちの彼女は、結べるようにな
れたのか?」

 望月さんは、今度は雪のほうに聞いた。

「私?」
「ああ。君も、うまく結べなくて、ルリ子に
ロープを手渡していただろう」


 雪が結べずに、ルリ子に手渡していたとこ
ろを、しっかり望月さんに見られてしまって
いたようだった。

 雪は、ばれていないと思っていたので、ま
いったなって表情をしていた。

「これを、こうやって結ぶんですよ」

 ルリ子に教えていた男性クルーが、今度は
暁のライフラインにぶら下がっていたロープ
を使って、雪に教えてくれた。

 雪は、男性クルーに言われて、自分でも、
もやい結びに挑戦していた。

「君は、体格が良いから、もっと出来るのか
と思ったが、まだもやいも結べなかったんだ
な」

 長身で大きな姿の雪を見ながら、望月さん
が雪に呆れていた。

「それにしても君は、すごいよな。もやいの
結び方も、船の抑え方も、しっかり出来てい


たよ」
「洋子ちゃんは、ヨット一番上手だもの!」

 望月さんが、洋子のことを褒めているのを
見て、物静かな洋子よりも先に、ルリ子が、
まるで自分のことを褒められたように、堂々
と答えていた。

「ルリ子は、人のことはいいから、自分がし
っかり間違えずに、もやい結びを出来るよう
になりなさい」
「はい!もう大丈夫です!」

 ルリ子が、笑顔で望月さんに答えた。

「本当か。そしたら、来週またちゃんと結べ
るかどうかのテストするぞ」
「ええ」

 望月さんに言われて、ルリ子はちょっと自
信なさげになっていた。

第103回につづく