落第点

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第101回

 横浜マリーナのポンツーンに一隻の船が入
港して来た。

 ルリ子や洋子が、ポンツーンの隅で、クラ
ゲをバケツですくったりして遊んでいるとき
に、セイリングに出ていたヨットが横浜マリ
ーナに戻って来たのだった。

 戻って来たヨットは、望月さんという横浜
マリーナの会員でヨットオーナーの暁という
ヨットだった。

 暁は、36フィートのレース艇だ。

 いつも、たくさんの若い男性クルーを乗せ
て、海に出ては、沖合でヨットレースの練習
をしているヨットだ。

「おーい!舫いを取ってくれ」


 コクピットでティラーを握って、舵を取っ
ている望月さんが、ポンツーンでヒマそうに
クラゲと遊んでいたルリ子たちに声をかけて
きた。

 ルリ子は、クラゲの入ったバケツを佳代と
抱えていたので、洋子がポンツーンに走って
行った。

 入港してきた暁の船首にいたクルーが、手
に持っている舫いロープを、洋子に向かって
投げた。

 洋子は、そのロープを受け取ると、ポンツ
ーンのはじに付いているクリートに結んだ。

 洋子の後ろから走って来た雪に、暁の船尾
にいたクルーが、後ろ側の舫いロープを投げ
て渡した。
 雪も、舫いロープを受け取ると、後ろ側の
クリートにロープを引っかけて、手に持って
いた。

「早く舫いロープを結んでくれ」


 雪は、コクピットにいる望月さんに言われ
たが、うまくもやい結びが出来ずにいた。

 もやい結びが出来ません、

 って望月さんに返事するのが恥ずかしかっ
た雪は、しばらくロープを握ったまま、おろ
おろしていた。

「ルリちゃん、結んで!」

 もやい結びが出来ずにあきらめた雪は、後

からやって来たルリ子に、受け取った舫いロ
ープを手渡した。

 雪から舫いロープを受け取ったルリ子は、
いったんクリートにロープを一回り結び付け
ると、もやい結びを結ぼうとした。

 が、

 ルリ子も、まだもやい結びの結び方を完璧
に出来るようには、なっていなかった。


「もやい結びって、どうやるんだっけ?」

 陽気な性格のルリ子は、明るい笑顔で微笑
みながら、暁の男性クルーに聞いた。

 暁の若い男性クルーは、ルリ子から舫いロ
ープを受け取ると、もやい結びを実演してみ
せながら、ルリ子に一所懸命教えてくれた。

「え、こっちを通してから、ここの穴に入れ
るの?」

 ルリ子は、暁の若い男性クルーに、手取り
足とりで、もやいの結び方を教えてもらって
いた。

「まだ、舫いも結べないのか?これは、隆君
に言って、ヨット教室の卒業は無理だから、
留年させるしかないな」

 ルリ子は、望月さんに言われてしまってい
た。

第102回につづく