アイドル・ルリ子

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第100回

 洋子たちラッコのクルーは、キャビンでお
昼の食事をしていた。

 食事を終えて、女子会のおしゃべりも一段
落したので、皆は、船を降りて、食後の運動
を兼ねて、マリーナ内をぶらぶら散策した。

「こんにちは」

 ルリ子は、すれ違った横浜マリーナのスタ
ッフに挨拶をした。

 陽気で、誰とでもすぐに仲良しになってし
まうルリ子は、マリーナのスタッフとも、す
っかり顔見知りになってしまっていた。

 そのスタッフは、普段、艇庫の中に保管し
てある32フィートのパワーボートを艇庫か
ら表に出して、エンジン部分の塗装を塗り直
していた。


「ラッコさんは、まだ新しいから、塗り直す
必要ないでしょう」

 マリーナのスタッフは、ルリ子に言った。

「うん。うちのは、エンジンのところ、まだ
まだ綺麗。だいたい、どのぐらいで、そうや
って塗り直すようになるの?」
「そうだね。オーナーさんにもよるけど、だ
いたい一年ぐらい置きで、少しずつ塗り直す
ようにしてあげると、船が長持ちするように
なるよ」

「そうか。じゃ、うちも来年ぐらいには、塗
ってもらうのかな」

 ルリ子が、スタッフに言うと

「うん。パワーボートのオーナーさんは、う
ちらマリーナのスタッフに頼まれる方が多い
けど、ヨットのオーナーさんの場合は、自分
たちで塗る人が多いかな」
「そうなの?ラッコは、どうするんだろう」
「隆さんも、クルー皆と自分たちで塗るんじ
ゃないかな。隆さんが、クルー時代に、マリ


オネットに乗っていた頃も、よくマリーナの
作業船台に乗せて、自分たちで塗ってたよ」
「ええ、隆さんって、マリオネットに乗って
いたんですか?」
「ああ、そうだよ。マリオネットで出かけて
帰ってきた後、よく他の当時のマリオネット
のクルーたちとマリーナ内を走り回って、は
しゃいでいたよ」
「そうなんだ」

 ルリ子は、スタッフから隆のクルー時代の
話を聞いていた。

「ルリちゃん、行くよ」

 ルリ子は、いつの間にかポンツーンのほう
に移動していた洋子に呼ばれた。
 ポンツーンに行くと、皆は、海に浮かんで
いるクラゲを眺めていた。

「お、ルリ子!元気しているか?」

 船台の上に乗っているヨット・ポセイドン
のデッキ上から顔を出して、見下ろしていた
オーナーの田村さんに、ルリ子は、上から声


をかけられた。

「あ、こんにちは。お久しぶりです」

 ルリ子は、上を見上げて、田村さんに返事
をした。

「そうだね。本当、久しぶりにヨットに乗り
に来たよ。ルリ子は、ヨットはよく来ている
のか?」
「私?私は、ヨット教室で初めて来て以来、
毎週日曜は必ずここに来ていますよ」

「そうか、すごいな。皆勤賞か」

 田村は、ルリ子に言うと、ポセイドンのキ
ャビンの中に入ってしまった。

「ルリちゃん、すごいね。マリーナじゅうの
皆に声かけられるじゃない」

 洋子が、ルリ子に言った。

第101回につづく