三崎のレストラン

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第139回

 麻美は、ラッコのキャビンの入り口を閉め
て、出かける準備をしていた。

 これから、ラッコの皆は、港のすぐ目の前
にあるまぐろ料理専門のレストランに向かう
のだった。

 せっかく、まぐろが名物の三崎にクルージ

ングに来たのだから、まぐろを夕食に食べよ
うというのが、今回のクルージングの楽しみ
のひとつだった。

 これから、隆たちラッコのメンバー一行が
行くレストランで横浜マリーナのパーティー
が催されるのだった。

 横浜マリーナでレストランの2階を貸し切
っていて、今回のクルージングイベントに参
加した横浜マリーナのヨット、ボートの人た
ちだけが、このパーティーに参加して楽しめ


るのだった。

 しかもレストランの費用のうち、半分は横
浜マリーナの経費として負担してもらえるの
だった。

 その分、隆たち横浜マリーナにヨットを保
管している会員たちは、毎月高い保管料や会
費をマリーナに支払ってはいるのだったが。

 11月の寒い時期に、ヨット、ボートを出
して横浜から三崎まで頑張ってクルージング

セイリングをしてきたクルーたちへのご褒美
のようなものだった。

「こんにちは」

 レストランの入り口で会った横浜マリーナ
のスタッフに、麻美は、挨拶した。

 今朝、横浜マリーナを出航してくるときに
ラッコの艇体を、艇庫からクレーンで下ろし
てくれたスタッフだった。


 そのスタッフに、レストランの入り口で受
付を済ませて店内に入る。

 マリーナスタッフたちのうち、レストラン
パーティーの運営を担当するスタッフたちは
朝、会員のヨット、ボートをクレーンで下ろ
した後に、車で三崎に移動して、隆たちがヨ
ットで三崎まで来る間に、パーティーの準備
をしてくれていたのだった。

「大変ね、お疲れ様」

 麻美は、スタッフたちに一言、声をかけて
から2階に上がった。
 2階には、横浜マリーナのためにテーブル
が並べられていて、テーブルの上には、美味
しそうな料理がたくさん並んでいた。

 パーティの準備は、すっかり整えられてい
て、黒服のレストランのウェイターさんたち
が、皆のところに周って、グラスにワインを
ついでくれていた。

「美味しそう!」


「肝心のまぐろがないじゃん」

 ルリ子と隆は、テーブルの上の料理をチェ
ックしながら、話していた。

「まぐろは、きっとパーティーが始まってか
ら、運ばれてくるのよ」

 麻美が、隆に言った。

 ラッコのクルーたちは、空いている席を見
つけて、そこに腰かけた。

「まだ、始まらないな」

 パーティーが始まるまでに、まだ少し時間
があるみたいで、まるでお預けされている犬
のように、ラッコの皆はテーブルの料理を前
に、パーティーの始まるのを待っていた。

第140回につづく