卒業式

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第140回

 横浜マリーナの理事長の挨拶でパーティー
は始まった。

 美味しそうな料理の前で、お預けさせられ
ていた隆たちラッコのメンバーも、ようやく
食事にありつけることができた。

 ヨットのパーティーでは、立食形式のパー

ティーが多く、料理が出ると、屈強なヨット
マンたちがワッと集まって、あっという間に
すべての料理を食べつくしてしまうので、女
性クルーの多いラッコのメンバーは不利な場
合が多いのだが、今夜のパーティーは、ちゃ
んとそれぞれに席が在って、ひとりひとりの
前にちゃんと自分の分の料理が用意されてい
るので、あわてて食べる必要がなく安心して
食べれた。

「それでは、今年の横浜マリーナクラブレー
スの年間総合優勝者の表彰式を行います」


 ステージ上では、理事長が暁などのレース
艇、レースの上位優勝者の表彰をしていた。

 ヨットレースには、あまり興味のない隆た
ちは、申し訳程度に表彰者に拍手すると、あ
とは、テーブルの前の地元三崎のマグロなど
料理に夢中になって食べていた。

「表彰式が終わって、ゲーム大会が終わると
いよいよだよ」

 麻美が、佳代に言った。

 佳代やルリ子、雪、洋子たちの横浜マリー
ナクルージングヨット教室の卒業式が始まる
のだ。

「卒業証書もらうのか?」

 隣りの席の中野さんが、佳代に聞いた。

 佳代は、嬉しそうに頷いた。

 横浜マリーナのヨット教室の卒業式では、
ちゃんと卒業式に出席した生徒たちには、横


浜マリーナが発行した卒業証書がもらえるの
だった。

 この卒業証書をもらったからといって、学
士も、ヨット乗りの称号も、特に何も特権が
与えられるわけではないが、ヨット教室に参
加した生徒としては、卒業証書がもらえるの
は、記念にもなるし、嬉しいものだった。

「卒業証書は、生徒さんの配属になったヨッ
トのオーナーさんの承認がないともらえない
んだぞ」

 中野さんは、佳代のことを脅かした。

「そうなの?それじゃ、私は、隆さんの承認
がないと、もらえないのかな?」

 佳代が麻美に聞いた。

「大丈夫よ。ちゃんと承認してくれているで
しょうし。例え、隆が承認してなくても、私
が佳代ちゃんのことは、承認しちゃうから」

 麻美は、佳代の頭を撫でながら言った。


「中野さんは、マリオネットの生徒さんの承
認したの?」
「うちの生徒は皆、優秀だから、ちゃんと承
認したよ」

 中野さんは、顔じゅういっぱいに生えた長
いひげを揺らしながら、豪快に笑って、佳代
に答えていた。

第141回につづく