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救助活動

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横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第48回

 麻美は、無線でマリオネットと交信、お話
をしていた。

「エンジントラブルですか?止まってしまっ
ているのですか」

 麻美は、無線でマリオネットの中野さんと
話している。

「エンジンがぜんぜんかからないのですよ。
それでセイルをフルに出してセイリングして
いるのですが、風が無くて走らなくて、夕方
までに三宅島まで着けそうもないのです」
「そうなんですか。今、どのへんを走ってい
らしゃいますか?」
「ちょうど新島の向こうの、エンジンが掛ら
なくて困っているんです」
「そうなんですか」

 麻美は、マリオネットに無線で返事をしな
がら、佳代に外にいる隆を呼んでくれと頼ん


でいた。

 マリオネットに、エンジンが掛らないと言
われても、麻美自身では、いったいどうした
ら良いものかわからなかった。

 佳代が表にいた隆と洋子を連れて、戻って
来た。

「エントラだって?」
「そうなのよ。無線でそう言われたのだけど
どうしたら良いのかな?」

「今、どこらへんを走っているって?」
「新島の向こうだって」
「新島の向こうでは、どこらへんを走ってい
るのだかわからないよ。ラッコだって、今、
新島の向こうを走っていると言えば、そのへ
んを走っているし」

 隆は、麻美に言った。

「無線、まだつながっているの?」
「うん」


 麻美は、隆に無線機のマイクを手渡した。

「こちら、ラッコ。マリオネットさん、聞こ
えますか?」
「こちら、マリオネット」
「マリオネットさん、今、どのへんを走って
いますか?」
「新島の向こう辺りを、風がぜんぜん無くて
セイリングというか漂っています。どうぞ」

 マリオネットは、ちょうど麻美が隆に伝え
たのと同じことを繰り返している。

「新島の向こう・・というのは、だいたいど
のへんですか?北緯とか東経とかでわかりま
すか?」
「北緯とかは、よくわからないですが、新島
の裏側辺りです」

 それでは、救出に行きたくても、どこに向
かったら良いのかさっぱりわからない。

「マリオネットさんには、GPSが付いてい
ましたよね。GPSの現在位置に表示されて
いる北緯東経を読んでもらっていいですか」


「あ、はい。北緯・・・」

 マリオネットの中野さんは、隆に言われて
慌ててGPSの画面を見ると、そこに表示さ
れている北緯東経を読み上げた。

 無線から聞こえる中野さんの緯度を、すっ
かりGPS、航海計器の操作に慣れてしまっ
た洋子が、素早くラッコのGPSに入力して
いく。
 入力し終わって、画面を地図に切り換える
と、そこにマリオネットの位置が表示されて

いた。

「今のラッコの位置からだと、ちょうど後ろ
のほうに戻った辺りだな」

 隆に言われて、佳代は表に出ると、ラッコ
の後ろのほうを眺めた。

「あった!」

 佳代は、そこにマリオネットの白いセイル
を見つけて叫んだ。


 隆と麻美も、佳代の指さした方角を一生懸
命探したが、マリオネットの姿は見つけられ
なかった。
 佳代の視力は、両目とも2.0と恐ろしく
良いのだ。

「とりあえず、そちらに向かおう」

 隆は、コクピットに行き、ステアリングを
握っていたルリ子から舵を引き継ぐと、佳代
にマリオネットの方角を確認してもらいなが
ら、そっちに向かって走り出した。

 ラッコが近づいていくと、マリオネットは
海上をぶらりと漂っていた。
 セイルは、メインとジブの2枚ともフルに
広げているので、メイン一枚で機帆走で走っ
ているラッコよりも、広げているセイルの枚
数は多かった。

 しかし、風が無風に近いため、セイルが孕
まず、バタバタしているだけで、まさに海の
上で漂っているという表現がぴったしだ。

「左舷に付けるから、フェンダーをぶら下げ


てくれ」

 隆に言われて、ほかのラッコの乗員たちは
船の左舷にフェンダー、防舷材を結んで、ぶ
ら下げていた。

 ラッコは、新島の沖合で、マリオネットに
機走でゆっくりと近づくと、接舷した。
 マリオネットのクルーたちは、右舷にやっ
て来て、マリオネットとラッコがぶつからな
いように、手で船を支えている。

「エンジン、大丈夫ですか?」

 隆は、中野さんに声をかけながら、洋子と
一緒にマリオネットに乗り移った。

 中野さんは、マリオネットの船内に先に入
ると、パイロットハウスに付いているエンジ
ンのスイッチをひねってみせた。
 エンジンは、うんとも、すんとも言わず、
静かなままだった。

「エンジンは確認してみましたか?」


 隆は、洋子とマリオネットの船内に入ると
入り口のところにあるエンジンの入っている
ボックスのフタを開けた。
 中からエンジン本体が姿を現した。

「エンジンかけてみてもらえますか」

 隆に言われて、中野さんは、もう一度、エ
ンジンのスイッチをひねる。

 隆は、エンジン本体上部にあるレバーを何
度か左右に動かしてみる。

 エンジンがかかりそうな気配はあった。

「エア噛んでいるんじゃないですか」

 隆は、燃料の流れていく透明ホースの中に
燃料と一緒にあぶくが入っているのを発見し
た。

「あ、本当だ!取れますかね」

 中野さんは、隆の指さした燃料ホースの部
分を覗きこんで言った。


 隆は、洋子と協力しながら、プシュプシュ
と燃料ホースの中の空気を、少しずつ上に、
上に移動しながら取り除いた。

「これで、かかるんじゃないですか」

 隆に言われて、中野さんが再度、エンジン
のスイッチをひねる。今度は、勢いよくエン
ジンが回りかかった。

「かかった!かかった!」

 中野さんは、エンジンが無事にかかったの
を確認して、大喜びしていた。

第49回につづく


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