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ピンポン

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日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 ゆみは、大きなピンポン台に近づいて感動
していた。

「ゆみちゃんは、ピンポンはやる?」
「やったことないけど、あたし、最近テニス
のラケットを、お兄ちゃんに買ってもらって
テニスを始めたばかりなの」
「テニスやるの?」
「まだ、ラケットを買ってもらっただけで、
やったことは無いんだけど」
「そうなの?」
「うん。あたしの病院のお医者さんが、最近

身体の調子がいいから何か軽い運動、テニス
の壁打ちぐらいならしても良いって」

 ゆみは、返事した。

 ゆりこ先生は、リビングの奥にある棚から
ピンポンの道具を出してくれた。
 ピンポンのラケットと白いボールだ。

「良明君、いっしょにやろうか」

 ゆみは、先生からピンポンのラケットを受


け取りながら言った。
 良明は、ゆみの方には来ないで、水槽の前
で魚を眺めていた。
 水槽には、大きな赤い金魚が泳いでいた。

「大きな金魚!」

 ゆみも、良明の後ろから水槽を覗き込んで
言った。

「かわいいね」

 ゆみは、大きな口をパクパクさせている金
魚を見て言った。良明も、金魚の泳いでいる
姿を嬉しそうに見ながら頷いた。
 先生が、水槽の下の棚から金魚の餌を取り
出して、ゆみたちに手渡した。

「あげてもいいの?」

 ゆみが先生に聞いた。ゆりこ先生は、ゆみ
に頷いた。さっそく良明と餌を半分っこして
水槽の中に入れる。
 金魚たちがやって来て、美味しそうに餌を


パクパク食べている。
 良明は、ぜんぶ自分の分の餌をあげ終わっ
てしまって、ゆみの餌を見た。

「もっとあげたい?」

 ゆみは、良明に自分の分の餌をあげた。

 結局、ゆみは、金魚に一つも餌をあげるこ
とはできずに、良明が、全部の餌を金魚にあ
げてしまった。

「もう、ないよ」

 もっと、金魚に餌を上げたそうな良明に、
ゆみは言った。良明は、さっき先生が餌を出
していた戸棚を開けて、その中に入っている
金魚の餌を取り出して、ゆみに見せた。

「あんまりいっぱい上げてしまうと、金魚が
お腹痛くなってしまうからね」

 ゆみは、餌を上げたい良明を説得した。


 良明は、手にしていた金魚の餌を、ようや
く戸棚の中に戻した。

「ね、今度はピンポンやろうよ」

 ゆみは、ピンポンのラケットを持って来て
良明に見せた。良明は、ゆみからピンポンの
ラケットを受け取るとピンポン台に行った。

「良明君って、ピンポンできるの?」

 ゆりこ先生が聞いた。

「野球できるものね。ピンポンも上手よ」

 ゆみが言った。

「あたしも、あんまり良明君が、野球してい
るところ見たことないんだけど、お兄ちゃん
が、良明君ってすごい野球が上手って言って
たわ」
「行くよ」

 ゆみは、反対側にいる良明に向かって、ラ
ケットでボールを打った。


 ピンポン玉は、良明のほうへ飛んでいき、
そのまま床に落ちてころがっていった。
 ころがっていくピンポン玉を見ていた良明
は、ラケットをゴルフのように持ち直してか
ら、ころがっていくピンポン玉をゴルフのよ
うに打った。打たれたピンポン玉は、床をコ
ロコロところがっていく。

「ゴルフじゃないんだから」

 ゆみは笑いながら、今度は、自分もラケッ
トをゴルフのように持ち直して、ころがって

いくピンポン玉を、ゴルフ風に打った。
 ゆみに打たれてピンポン玉は、また床をこ
ろがっていく。
 それを受けて、良明が、ラケットでゴルフ
風にピンポン玉を打つ。
 しばらく二人は、ピンポン玉でゴルフをや
っていた。

「何をやっているの?」

 二人を見かねたゆりこ先生が、ピンポン玉
を拾い上げた。


「ほら、行くよ」

 ゆりこ先生は、ラケットで、ピンポン玉を
普通にピンポン台で、良明に打った。

パーン!

 ゆりこ先生が打ったピンポン玉を、反対側
にいた良明が打ち返した。戻ってきたピンポ
ン玉を、ゆりこ先生が打ち返す。
 また戻ってきたピンポン玉を、良明は、今
度は、思い切り強く打ち返した。

「お、すごいじゃない」

 ゆりこ先生も、戻ってきたピンポン玉を、
さっきよりも強く打ち返した。
 良明が、また強くピンポン玉を打ち返す。

「あっ」

 ゆりこ先生は、ミスってピンポン玉を打ち
返せなかった。床をころがっていくピンポン
玉を追いかけていって、拾い上げた。


「今度は負けないぞ」

 ゆりこ先生は、ピンポン玉を良明に向かっ
て打った。それを受けて良明が、ゆりこ先生
に打返す。
 ゆりこ先生は、良明からのボールが打ち返
せずに、ボールは、床をころがっていった。
 ゆりこ先生は、ボールを床から拾い上げる
と、今度はボールを、ゆみに渡した。

「先生、ちょっと休憩。ゆみちゃん、代わり
にやっててよ」

 ゆみは、先生からボールを受け取ると、自
分のラケットで良明に向かって打った。
 ボールは、反対側の良明のところに飛んで
いった。けど、良明は、そのボールを打ち返
さなかったため、ボールは、床に落ち、ころ
がっていった。
ころがったボールを良明は拾い上げて、ゆり
こ先生のほうに打った。

「うわ、なに」

 突然、飛んできたボールを、ゆりこ先生は


慌てて手で打ち返した。
 良明は、戻ってきたボールを、またゆりこ
先生に打ち返す。

「ゆみちゃん、お願い」

 ゆりこ先生は、戻ってきたボールを今度は
ゆみのほうに手で打った。

「はーい」

 ゆみは、ゆりこ先生からボールを受け取っ

て、ラケットで良明に打ち返した。
 ボールは、良明の横の床をコロコロところ
がっていった。ころがっていくボールを見て
いた良明は、そのボールを拾い上げてから、
また、ゆりこ先生にボールを打ち返した。

「あっ」

 今度は、ゆりこ先生は、たまたま手にラケ
ットを持っていたので、そのラケットを振り
上げて、ボールを打ち返すことができた。
 良明は、戻ってきたボールをまた、ゆりこ


先生のほうに打ち返す。
 ソファに座って、くつろいでいた先生は、
ラケットで、ボールを、ピンポン台の前にい
るゆみの方に打った。
 ゆみは、そのボールを受け取り、良明のほ
うに打った。またボールは、良明の横の床に
落ち、床をころがっていた。

「どうして、あたしのボールは、打ち返して
くれないの?」

 ゆみは、良明に聞いた。

「ほら、行くよ」

 ゆりこ先生は、良明に向かって、ピンポン
玉を打った。良明は、いつでも来い!みたい
な感じで、ラケットを身構えている。
 良明のところに、ボールが飛んできた。良
明は、そのボールを先生に打ち返す。
 ゆりこ先生も、戻ってきたボールを、ラケ
ットで打ち返す。今度は、良明が打ち返すの
に失敗して、ボールは、床の後ろへところが
っていった。


「今度は、ゆみちゃんが打ちなさい」

 ゆりこ先生は、ピンポン玉を、ゆみに手渡
した。ゆみは、ボールを空中に投げて、ラケ
ットでサーブを打った。
 ピンポン玉は、反対側の良明のコートに、
珍しくきれいに飛んでいった。
 せっかく上手に、サーブが打てたというの
に、良明は、そのボールを打ち返さずに無視
したので、床にころがった。

「いやーだ、意地悪」

 ゆみは、自分のボールを無視し続ける良明
に、文句を言った。

「つまらない。ゆみは、もうピンポンはやら
ない」

 良明は、ちっとも自分の打ったボールを打
ち返してくれないので、ゆみは、ラケットを
置いて、ピンポン台から離れてしまった。

「ほら、行くぞ」


 ゆりこ先生が、良明に向かって、ボールを
打ってサーブをした。
 ピンポン玉は、良明のところに飛んでいっ
て、そのボールを良明は素手で取った。

「手で取ったらだめよ。ラケットで打ち返さ
なきゃ」

 ゆみは、良明に言った。

 良明は、手にしたボールを持ったまま、ゆ
みのところにやって来た。良明は、テーブル

の上に置かれていた、ゆみのラケットを、ゆ
みにボールと一緒に手渡した。

「ありがとう」

 ゆみは、訳がわからないまま、良明からラ
ケットを受け取った。
 すると、良明は、すぐ近くから、ゆみに向
かってすごく軽く優しくサーブした。
 ゆみは、なんだかわからないままに、飛ん
できたピンポン玉に軽くラケットを当てて、
良明のほうに打ち返した。


 戻ってきたピンポン玉を、良明が軽く打っ
て、ゆみのほうに戻した。
 良明は、ピンポン台の半分だけを使って、
そこで、小ピンポンをゆみとはじめた。

「今まで、ゆみちゃんのサーブは、ぜんぜん
やらなかったくせに、なんで急に今ごろにな
って、ゆみちゃんとピンポンしだすの?」

 ゆりこ先生は、良明に聞いた。

「もしかして、ゆみのことを気遣ってくれた

のかな?」

 ゆみは、ちょっと嬉しそうだ。

 良明は、黙ったまま、ゆみに静かに頷いて
いた。

「そろそろ夕食に行きましょうか」

 二人が、ピンポンで遊んでいると、ゆりこ
先生が声をかけてきた。


「夕食どこかに行くの?」
「ええ、美味しいところに食べに行きましょう」

 ゆりこ先生は、ゆみに言った。

「中華料理屋さん」につづく


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