「ただいま!」
祥恵は、自宅の表の扉を開けた。2人の家は、東松原駅前の大通りを通り抜けた閑静な住宅地の中にある一戸建ての住宅だ。入口に「今井デンタルクリニック」と書かれた大きな看板が立っている。
お父さんは、この地で歯医者を開院していて、歯科医の資格も持っているお母さんも、お父さんの歯科医院を少しだけ手伝っている。
「お姉ちゃん、陽子おねえちゃんいないよ」
ゆみは、祥恵に聞いた。いつもは、歯科衛生士で受付を担当している陽子さんの姿が、どこにも見当たらなかったのだった。
「お帰り」
奥の部屋から、お母さんが出てきて、2人を出迎えた。