兄に笑われた

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 ゆみは、ゆりこ先生の膝の上に座っていた
ら、だいぶ落ち着いてきた。

「大きな犬だから、恐かったよね」

 ゆりこ先生は、少し落ち着いてきたゆみを
見て言った。

「ううん。恐くはないけど、ちょっとびっく
りしちゃっただけ」

 ゆみは、ゆりこ先生に話した。

 ゆりこ先生は、リビングのソファで、前に
座っている犬の飼い主のおばさんと楽しそう
に、おしゃべりをしていた。
 ゆみは、リビングの部屋の中を見回すと、
良明の姿が見えない。

「良明君は?」

 ゆみは、ゆりこ先生に聞いた。

「向こうの奥の部屋で、犬と遊んでいるみた
いよ」


 ゆりこ先生は、奥の部屋を指差しながら答
えた。先生は、犬の飼い主のおばさんと二人
で、おしゃべりを続けていたので、手持ちぶ
さたになったゆみは、先生の膝の上から立ち
上がって、奥の部屋を覗き込んでみた。

 ゆみは、奥の部屋をそっと覗き込んでみる
と、良明の姿がそこにあった。
 良明は、3匹の犬と一緒にいた。そこはキ
ッチンになっていた。
 キッチンの端の床には、犬用のトイレが置
いてあった。その反対側には、大きなボウル

が置いてあって、その中にドッグフードが置
かれていた。大きな犬の食事だけあって、量
もすごかった。
 3匹のうち、1匹は、今まさにその盛られ
たドッグフードの食事中だった。
 もう1匹は、良明とロープで綱引きをして
いた。あと1匹は、その2匹のことをお座り
して、静かに眺めていた。

「可愛い」

 ゆみが、犬たちの姿を見て、小さな声でつ


ぶやいた。その声を聞いて、良明は振り返っ
て、ゆみが、そこにいることに気づいた。
 良明は、相変わらず黙ったまま、ゆみとは
何も話してくれていないが、ゆみのところに
また犬が行かないようにしてくれているのか
良明は、犬の首の周りを抱えて、押さえてく
れているようだった。
 ゆみは、部屋の中に静かに入って、お座り
している犬の後ろから、そっと尻尾を撫でて
触ってみた。

「あら、ゆみちゃんは?」

 ゆりこ先生は、おしゃべりに夢中になって
いて、いつの間にか、自分の膝からいなくな
っていたゆみに気づかなかった。

「トイレじゃないかしら」

 犬の飼い主のおばさんが、ゆりこ先生に言
った。

「トイレの場所、ゆみちゃんったら、わかっ


ているのかしら?」

 ゆりこ先生は、今日初めて、ゆみが、この
家に来たことを思いだして言った。
 そう言うと、ゆりこ先生は、ソファから立
ち上がって、部屋の中を見てまわる。

 キッチンの方から、ゆみの声がした。

 ゆりこ先生は、飼い主のおばさんと共に、
そちらの方に向かった。キッチンには、良明
もいた。大きな犬たちも、3匹とも揃ってい

た。ゆみは、その犬たちの輪の中にいた。

「ゆみちゃ~ん!」

 ゆりこ先生は、びっくりして、大声を上げ
てしまった。ゆみが、大きな犬たちに囲まれ
てしまっているのかと思ったのだ。
 その大声に、さらに、びっくりしたのは、
ゆみの方だった。

「先生、どうしたの?」


 ゆみは、大声を上げたゆりこ先生の方を振
り向くと、犬の頭を撫でながら聞いた。
 ゆりこ先生は、ゆみが、また大きな犬たち
に囲まれてしまったのかと思い、心配したの
だった。が、ゆみは、ケロッとした顔で、嬉
しそうに犬のことを撫でているだけだった。

「ゆみちゃん、大丈夫?」
「うん。可愛い」

 ゆみは、すっかり犬たちと仲良しになって
いた。良明も、ゆみの横の方で、犬たちと遊

んでいた。

「犬のボーン」につづく