ミスタールビン

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

「ゆみちゃん、彼をルビン先生のところに連
れて行ってあげて」

 ヨシュワキー、シャロルと食堂から教室に
戻ると、ゆみに後ろからロールパン先生が声
をかけてきた。
 ルビン先生というのは、この小学校のアメ
リカ人の先生だった。アメリカ人の先生なの
だが、日本語がとても上手に話せて書ける先
生だった。もしかしたらゆみよりも上手に話
せているのかもしれない。

 ルビン先生は、担任のクラスは持っていな
い。英語の授業担当の先生だった。英語の授
業担当だけど、アメリカ人の生徒に教えてい
るわけではない。

 普通に英語の授業を教えるのではなく、午
後には毎日この小学校に通学している全学年
の日本人の生徒を自分の教室に集めて、彼ら
に日本語で英語、英会話を教えていた。
 なので、この小学校の日本人の生徒は皆、
午後はアメリカ人の生徒と一緒には授業を受
けていないのだった。午後はルビン先生の授


業を受けている。
 アメリカ人生徒のようなゆみはルビン先生
の授業を受けてはおらず、ほかのアメリカ人
の生徒と一緒に、普通に午後の授業を受けて
いた。

「それじゃ、あたしはルビン先生のところに
行ってくるね」

 ゆみは、ルビン先生の教室にヨシュワキー
を連れて行くためにシャロルと別れ、ヨシュ
ワキーと来た道を戻っていく。

「先生には、ゆみが少し遅れるって伝えてお
くね」

 シャロルは、ゆみに言ってから、自分は自
分の教室へと戻っていった。

 ルビン先生の教室は、食堂から1階上に上
がったところにある。ゆみは、ヨシュワキー
を連れてまた階段を下って、ルビン先生のあ
る部屋に戻って、教室のドアをノックした。

「はい」


 部屋の中から背の高いスリムでダンディな
紳士、男性が出てきた。ルビン先生だった。

「お、ゆみちゃんじゃないか。どうした?」
「ルビン先生。こんにちは」

 ゆみは、先生に挨拶した。

「今度、うちのクラスに転校してきたヨシュ
ワキー君です」

 ゆみは、ヨシュワキーのことをルビン先生

に紹介した。

「ああ、ロールパン先生から聞いてるよ。後
はこちらで預かるから、ゆみちゃんは自分の
教室に戻りなさい」

 そう言うと、ルビン先生はヨシュワキーの
ことを、ゆみから預かり教室に招き入れた。
 ゆみは、ヨシュワキーのことをルビン先生
に預けると、自分は教室に戻った。
 ヨシュワキーはゆみと別れてルビン先生の
教室で一人になっていた。


 背のとても高いアメリカ人の男性と向き合
って緊張していた。

「こんにちは。うーんと名前はなんていうの
かな?」

 背の高い男性、ルビン先生は、日本語でヨ
シュワキーに質問した。ヨシュワキーは、ル
ビン先生の質問には何も答えずに黙ったまま
立っていた。

「緊張してるのかな。僕はルビン、ルビン先

生です」

 ルビン先生は、ヨシュワキーに自分のこと
を日本語で自己紹介していた。

「さっきのゆみちゃんも、ロールパン先生も
君のことをヨシュワキー君と言っていたけど
まさか本当にヨシュワキー君ではないよね」

 ルビン先生は、持っている名簿をめくって
ヨシュワキーの名前を確認する。名簿には日
本語で「岡島良明」と書かれていた。


「岡島君か。でも、ここはアメリカだから名
前の方で良明君と呼ぶことにしよう」

 ルビン先生は、名簿に書かれた漢字の名前
を難なく読んで理解していた。ゆみが日本人
なのか中国人なのかわからなかった問題をほ
んの一瞬で解決してしまっていた。

「さあ、君の席はどこにするかな」

 ルビン先生は、良明の背中を押しながら教
室の中に入れた。良明は、初めて来た教室の

中を見渡した。
 今まで自分がいた教室と違い、この教室の
中の生徒は皆、日本人ばかりだった。
 教室の一番奥の場所に妹の美香や由香の姿
があって、妹たちの隣の席にならなければい
いなと思っていた。
 部屋の廊下側に年齢の低い生徒たち、窓側
に高い生徒たちが座っているようだ。
 ルビン先生は、窓側の席に一つ空いている
場所を見つけた。

「良明君の席は、そこにしよう」


 そう言うと、良明のことをその席に座らせ
た。良明は、ルビン先生に言われた席に座る
と自分の周りにいる生徒を見た。
 そこに、週末に公園で一緒に野球をした椎
名たちの姿を見つけた。

「おっす!」

 椎名は、良明と目があったときに、良明に
挨拶してきた。

「彼は、今週からロールパン先生のクラスに

転校してきた良明君だ」

 ルビン先生は、良明の周りにいる生徒たち
に良明のことを紹介していた。

「ヒデキ君」につづく