最終レース

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第114回

 来週は、横浜マリーナのクラブレースの最
終レースだった。

 横浜マリーナでは、マリーナに保管してい
るヨット仲間同士の親交を兼ねて、月に一回
マリーナに停泊しているヨット、クラブ艇同
士でヨットレースを開催していた。

 月一回のそれぞれのレースでの優勝者、順
位を決めて、今回のレースでは、誰が勝った
負けたとかって競争している。

 その毎月行われているレースの順位を総合
して、シリーズを通して、その年のレースの
総合優勝者を決めて表彰していた。

 レースといっても、横浜マリーナのクラブ
レースは、暁たちが参加している各地の本格
的なヨットレースとは違い、横浜マリーナに
保管しているヨットが、足の速いレース艇、


遅いクルージング艇すべてが、入り混じって
参加しているもっと気楽なアットホームなヨ
ットレースだった。

 ラッコは、ナウティキャットというフィン
ランド製のモーターセーラーだった。

 キャビンの中も木工細工で豪華に重たく造
られていて、船内での生活は、快適にできる
ように設備されているが、その分、船が重た
くなっていて、セイリング時には、レースな
どでも、ほかのヨットに比べたらスピードは

はるかに遅かった。

 そんなこともあり、ラッコは、はじめクラ
ブレースには参加するつもりはなかった。

 しかし、今年はじめのレースのときに、暁
の望月さんに頼まれて、クラブレースの本部
艇をやってからは、毎月のクラブレースの度
に、ラッコが本部艇を担当するようになって
いた。

「来週は、今年最後のクラブレースだね」


 隆は、来週が最終レースだということに、
勝山での夜の宴会で中野さんから聞くまで気
づかなかった。

「ああ、そうだったんですね。ぜんぜん気づ
きませんでした。マリオネットさんは、今ま
でのレースの成績は、上位なんですか?」

 隆が、中野さんに聞いた。

「うちの船は、レースでは常に遅いのに上位
のわけないじゃない。何位なのか知らないけ

ど、たぶん下のほうでしょう」

 中野さんは、お酒を飲みながら、レースの
順位など全く気にする様子もなく豪快に笑っ
ていた。

「そうなんですか。でも、うちと同じモータ
ーセーラーでも、マリオネットは、けっこう
セイリング性能は良いモーターセーラーだと
は思いますけどね」
「ええっと、マリオネットさんは、今のとこ
ろ第27位かな」


 ルリ子が、キャビンの棚から出した今年の
これまでのレースの結果が、書かれたレポー
トを確認しながら言った。

 毎月の本部艇では、ルリ子がスタート、ゴ
ールの笛を吹いて、各艇のタイムを取る担当
をしているので、各艇のレースの順位は、す
べて把握しているのだった。

「27位か。まあまあだね。もっと最下位な
のかと思ってた」

 中野さんは、ルリ子から順位を聞いて、自
分でも驚いていた。

第115回につづく