大島、再上陸

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第86回

 ラッコは、夏以来、一か月ぶりの大島、波
浮港への上陸となった。
 その後ろからマリオネットも入港した。

 夏のクルージングでの大島は、巡航中にエ
ンジンが止まってしまうというトラブルに見
舞われたマリオネットだったが、今回は、特
に何のトラブルも無く、ラッコの後につづい

て無事に大島に到着した。

「久しぶりの大島!」

 佳代が、もやいロープを片手に持って、一
番最初に大島の岸壁に上陸した。
 岸壁に降りると、船が流されてしまわない
ように、急いでロープを港のビットに結んで
船を停泊させた。

 船側では、ルリ子や雪が、佳代の持ってい
る反対側のロープの長さを調整して、うまく


連携を取っている。

「おお、すごいな」
「うまく船を舫いましたね」

 周りに止まっているヨットの乗員たちは、
女性ばかりで、上手に船を操船、停泊させて
いるラッコのクルーたちの様子をみて、感嘆
の声を上げていた。

「お前よりも、よっぽど彼女たちのほうが、
しっかりヨットマンしているじゃないか」

 周りに泊まっているヨットのオーナーは、
自分のところの男性クルーに対して、ハッパ
をかけながら褒めていた。

「お昼にしようか」

 船内の中から、少し年輩の女性、麻美が、
ヨットの停泊作業をしていた佳代たちを呼ん
でいる。

「はーい!」


 佳代たちは、停泊し終わって、ロープの余
りをきちんと整理すると、麻美の待つ船内に
入っていった。

 男性ばかりでクルージングしているヨット
が多い中で、ラッコたちのように女性クルー
で操船しているヨットは、クルージングに行
くと、港でけっこう目立っていた。

「今日のお昼は、冷やしそうめんね」

 麻美が沸かしておいたお鍋のお湯で、皆は

そうめんを茹でた。
 野菜を切って、お皿に盛りつけると、サラ
ダを作る。マリオネットのクルーたちもやっ
て来て、港に入港し終わったヨットのキャビ
ンの中では、お昼の食事が始まった。

「お昼を食べ終わったら、バスに乗って、大
島の中心地に行ってみような」

 午後からは、大島観光をする予定だった。

 前回、夏に来たときは、大島では時間が無


くて、島の中を見て周れなかったので、今回
はゆっくりと大島を見て周ろうというのが、
クルージングのメインの目的だった。

第87回につづく