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城ケ島

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横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第144回

 城ケ島は、三浦半島の先端に飛び出した小
さな島だった。

 島の周りは、ぐるっと徒歩で周っても、そ
んなに時間のかからない小島だ。
 島へは、三浦半島の先っぽ、三崎側から城
ケ島大橋という橋が掛けられていて、その橋
を渡っていく。

 京浜急行の三崎口駅から、城ケ島行きの京
急バスが出ており、都心からも直行できる。

 島内に小さな港があって、そこから観光用
の小さな旅客船が出航している。
 それに乗れば、島の周りをぐるっと船で一
周してくれて、相模湾を外から、中から体験
できる。中からというのは、船の底にガラス
の窓が付いていて、お客さんは、そこから海
底が見えるのだ。

 相模湾を泳いでいる魚が一望できる。


 朝も早く、観光船はまだ出航していなかっ
たのでラッコの皆は乗れなかった。
 隆たちは、時間が無いので、観光船に乗る
のはあきらめて、歩いて島内を巡ってみるこ
とにした。

「ここが昨日、杉原君が話していたカニが獲
れる岩場じゃないの?」

 麻美が、歩きにくい岩場を注意して歩きな
がら、隆に聞いた。

「どうしてわかるの?」
「え、わからないけど。なんとなくそんな感
じのする岩場だったし」

 麻美が、あやふやに答えた。

「あっちにも岩場があるよ」

 佳代が、自分たちの先のほうにある岩場を
指さして、麻美に言った。

「本当ね。あっちかな?」


「そう、そうだよ。あっちの岩場がカニがい
っぱい獲れるんだ!」

 隆が、麻美に答えた。

「そうなんだ?朝のおみそ汁用のカニを獲ろ
うよ」
「カニどころじゃないぞ。あさりとか貝とか
いっぱい獲れるぞ」

 隆が言った。

「へえ、アサリも?隆も、けっこう三崎のこ
と知っているのね。三崎に詳しいの?」
「ぜんぜん知らない」

 隆が、笑いながら答えてみせた。

「カニ、いないよ」

 浅瀬の中の岩を持ち上げて、下を確認して
いたルリ子が言った。

「カニなんて、こんなところにいないさ」


「隆じゃない。ここにカニがいるって、さっ
き話していたのは」
「俺が知るわけないじゃん。適当に言っただ
けだもの」

 隆が、爆笑しながら答えた。

「あ、もう。適当に言わないでよ。隆の言う
ことなんかもう信じないから、ね」

 麻美は、佳代の手を引きながら、岩場を進
みながら、隆のことを後ろから足を上げて蹴

っ飛ばすふりをしていた。

第145回につづく


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