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波浮港観光

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横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第64回

 波浮に着いて、夕食の買い物に出かけるこ
とになった。

 ヨットの扉を閉めて、バッグを持って、岸
壁に降りる。波浮の港は、小さな村落で、港
の漁協のある奥側に、家はまとまっている。

 ちょうど、ラッコが停泊している場所の前

辺りにバス停があり、そこから大島の中心街
元町や岡田に向かうバスが出ている。

 元町といえば、横浜の山下公園前にあるシ
ョッピングストリートが有名だが、ここ大島
の島の中心地にも元町という場所はある。
 横浜の元町ほどではないかもしれないが、
大島の元町も、大島の中で一番賑わっている
町だ。

 バスに乗って、元町や岡田まで出れば、大
きなスーパーや観光スポットもあって、楽し


めるのだが、ラッコが大島に到着したのも遅
く、時刻は既に3時近くになっていたので、
買い物は、この近所の波浮の街で済ませるこ
とになった。

 まずは、漁協に行って、そこで魚の調達を
した。

 魚以外の食材は、近くに木造の小さな雑貨
屋があったので、そこで調達した。
 都心であまり見かけなくなった牛乳屋さん
があったので、そこでミルクとヨーグルトも

購入した。ビンには、大島牧場産と書いてあ
った。

「そっちの階段を登ってみようか」

 買い物が終わったので、隆たちは見つけた
古い石段を上がってみることになった。
 石段を上がったところに、古い木造の民家
があった。
 その中から観光客らしい4、5人の団体が
出てきた。


「何かの観光スポットかな。入ってみよう」

 その団体さんたちが出てきた民家の中に、
隆たちも入ってみた。

 入り口には、三つ折りの小さなパンフレッ
トが置いてあった。そこには、「川端康成館
」と書かれていた。

「川端康成が、雪国とかの小説を書いた場所
ですって」

 麻美が言って、入り口脇にあった階段を上
がって行く。
 佳代やほかの皆も、麻美について階段を上
がって行った。

 2階には、和室の部屋が、何部屋かあって
各部屋では蝋人形の川端康成が座って、小説
を書いたりしていた。

 各部屋の前の廊下には、大きな窓が付いて
いて、そこから波浮の港やその向こう、太平
洋、伊豆七島が見えていた。


 隆たちは、しばらくその窓から自分たちが
走って来た新島や利島を眺めていた。

「ここから伊豆半島も見えるのね」
「この景色を眺めながら、川端康成は伊豆の
踊り子とかを書いていたのね」

 川端康成の世界に、しばらく浸った後で、
隆たちは、川端康成館を出て、船に戻った。

第65回につづく


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