波浮港に入港

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第63回

 大島が、だんだんと近づいてきた。

 大島が近づいてくると、ラッコが向かって
いる先の島の中央付近に、白波が吸い込まれ
ていく個所があるのが、見えてきた。

「あそこが、波浮港の入り口だから」

 隆は、ステアリングを握っている雪に、行
き先の説明をしている。

 白波が吸い込まれている個所に波浮港の湾
があって、その湾の内側に向かって、波が打
ち寄せられて高くなっているのだった。

「波が高くなっていて、あそこの中を越えて
行くのちょっと恐いね」

 雪が言った。


「うん、波浮の港は、入り口の入港は、ちょ
っと難しいけど、その分、中に入ってしまえ
ば、山に囲まれていて、静かで安心して停泊
できる港だから」

 雪は、ちょっと緊張しながら、ステアリン
グを握り直した。

「大丈夫だよ。入港のときは、俺がステアリ
ングを代わるから、もう少しぎりぎりまでス
テアリングを握っててごらん」

「さあ、いよいよ入港だ!」

 隆が、雪からステアリングを代わって、握
りながら皆に声をかけた。

 いつも、入港前は、もやいを船体の両舷に
結んだり、フェンダーをぶら下げたりしてい
るラッコのクルーたちは、コクピットのロッ
カーなどからロープやフェンダーを取り出し
て、いつものように準備しようとした。

「ロープやフェンダーの準備は、港の中にし


っかり入港し終わってからでいいよ」

 隆は、クルーたちに声をかけた。

「ここで、ロープやフェンダーの準備してい
て、船が揺れて、海に落ちてしまったら大変
だからね」

 波浮の入り口付近は、白波が高く、船が大
きく揺られているので、その中でデッキを移
動して、海に落ちてしまっても大変なので、
コクピット内に留まっているように指示した

のだった。

 ラッコは、港の入り口付近の高い白波を越
えて、波浮港に入港した。
 マリオネットも、ラッコの後ろについて、
波浮の港に入港した。

「大きな港!」

 波浮港は、今まで停泊してきた伊豆七島の
どの港よりも、広くて大きな港だった。


 夏の伊豆七島の魚港は、ボートやヨットな
どのレジャーボートの数が多く、狭い港内に
は、ボートやヨットの白い船体が目立ってい
て、普段から停泊している漁船のほうが、端
のほうで小さくなっていた。

 しかし、

 ここ、波浮港は、たいへん広い湾になって
いて、停泊している漁船のサイズも大きく、
数も多いので、やって来るボートやヨットに
対しても、漁船も、しっかり存在感を出して

いた。

 ラッコは、36フィートのヨットの横に2
艇分の船が停泊できる空きスペースを発見し
て、そこに停泊した。

 ラッコが無事に停泊し終わると、その横に
マリオネットが入港し停泊した。

第64回につづく