快適セイリング

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第62回

 今日も快晴の中、ラッコはセイルを上げて
快調に走っていた。

「で、隆はどうなのよ?」

 麻美が、船尾のベンチに腰掛けている隆に
聞いた。

「え、それは仕事が無ければ、俺も、このま
まずっと南の島にでも行って、クルージング
していたいよ」

 隆も、ルリ子や佳代と同じく、ずっとヨッ
トでクルージングしたい派だった。

「私は、今回のクルージングは、一週間ぐら
いで横浜に戻って、また仕事して普段の生活
に戻って、ヨットは、次のまとまった休みが
来たら、また出かけるのでいいかな」


 麻美が言った。

「現実的だな、麻美は」
「まあね。ほら、ちゃんと現実も見れる人も
いないとね」
「次の休み、秋のシルバーウィークまでクル
ージングはお預けにするか」
「隆は、夢ばかり追いかけて生きている人だ
から、私が締めるところは締めないと」
「助かります、秘書様」

「秘書?」

「会社では、私が隆の秘書だから」

 ルリ子に聞かれて、麻美は答えた。

「え、秘書だからなの?」
「ええ」

 繰り返し質問してきた洋子に、今度は麻美
は答えていた。その答えを聞いて、洋子は雪
とお互い顔を合わせて、なんかちょっととい
う顔をして見つめ合っていた。


「大島って、ほかの島よりも大きいからわか
りやすいね」

 ラッコのステアリングを握っていたルリ子
が言った。

 大島は、ほかの伊豆七島に比べて、はるか
にサイズが大きな島だから、目標物としても
操船しやすかった。

「島のてっぺんには、三原山という三角の山
があるだろう。あれのおかげで余計に目標に

しやすいだろう」
「三原山って、以前に噴火した山だよね」
「ああ、大島に到着してもし時間があったら
登ってみようか」

 洋子と隆は、話している。

「あっちの小さな島はなに?」

 佳代が、目の前の大島ではなく、左舷に見
えている小さな島を指さして聞いた。


「あれは、利島だよ」
「利島?」
「島は、小さいんだけど、あの島も、自然が
豊かで良い島だよ」

 隆は、答えた。

「行ってみたいな」
「あの島には、入港しないの?」
「利島は、ヨットで行ってみたいけど、ヨッ
トは入港できないんだよ。だから、利島に行
くとしたら、東海汽船に乗って行くしかない

んだ」
「なんだ。つまらない」

 ルリ子が言った。

「今回は無理だけど、こんど大島クルージン
グするときは、大島までヨットで来て、大島
にヨットを置いておいて、東海汽船で利島に
渡ってみようか」
「それも、楽しそうだね」

 ラッコのメンバーたちの話は、クルージン


グ中ずっと船上で尽きることが無かった。

第63回につづく