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波浮温泉

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横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第65回

 波浮に着いて、夕食の買い物に出かけるこ
 隆たちラッコのメンバーたちが、波浮の街
観光からヨットに戻ると、マリオネットのメ
ンバーたちと出会った。

 隆たちが、ちょうど買い物から戻って来た
ときに、マリオネットのメンバーたちは、出
かけるところだったみたいで、バスタオルを

肩からかけて、洗面器やシャンプーを片手に
ヨットから降りてきた。

「お風呂ですか?」
「ええ、ちょっと行ってきます」

 隆が、中野さんに聞いてみると、中野さん
は答えた。

「俺らも、先にお風呂に行こうか」

 ラッコのメンバーたちも、買ってきた荷物


を、船内に置くと、バスタオルやシャンプー
着替えなどを準備して、お風呂に出かけるこ
とになった。

 波浮のお風呂は、港の前の細い山道を登っ
ていったところにある。

 そこの山の上には、郵便局、かんぽの宿が
あるのだ。

※波浮の「かんぽの宿」は現在ありません。

 白いきれいな立派な建物で、その施設の中
にある入浴施設は、泊まり客でなくても、入
浴のみの利用もできるのだった。

 ボートやヨットの人たちは、泊まる場所は
自分たちの船のキャビンがあるので、この施
設のお風呂だけをよく利用している人たちが
多かった。

 海で汗をかいてから、山を少し登るこの距
離が、運動の後のお風呂としてはちょうどい
い場所にあるのだった。


「じゃね。また、後でね」

 麻美や佳代たちラッコの女性クルーは、隆
に手を振って、女性用の風呂のほうに入って
行った。隆も、手を振り返しながら、男性用
の風呂に入った。

「ね。今夜の食事なんだけど、皆で相談して
ここで食べていこうってことになったんだけ
ど。いいかな?」

 お風呂から出てきた隆に、先に出てきてい

た麻美が聞いた。

 お風呂と同じフロアに、レストランが付い
ている。そこのレストランで食べようって話
になったらしい。

「いいよ、別に。ここのレストランの食事は
けっこう美味しいよ」

 以前にも、ここ波浮のかんぽの宿に来たこ
とがある隆は、麻美に答えた。


「夕食は、今はちょっと混んでいるから、私
たちは7時からなんだって」

 麻美に言われて、隆やほかのメンバーは、
7時の食事まで、レストランの前の待合室で
待つことになった。

「海鮮料理か」
「なんか美味しそうだね」

 レストランの食事時間を待っている間、表
に飾られている料理のメニューを眺めながら

隆と洋子は話していた。

 レストランの前には、ピンポン台が2個置
いてあった。
 そのピンポン台で、ピンポンをしていた男
の子たちの食事の番がきて、彼らはピンポン
をやめて、レストランに入っていった。

 ピンポン台が空いたので、麻美と雪は、そ
こに行って、ピンポンを始めた。
 見た目は、おとなしそうな女の子だが、運
動好きで活発な洋子も、隆とのおしゃべりを


やめて、麻美たちのピンポンに加わった。
 運動は、それほど得意でもないが、陽気で
お祭り騒ぎが好きなルリ子は、皆がやってい
るピンポンの周りで応援にはしゃいでいた。

「ちょっと上の階に行ってみようか」

 隆は、一人残っていた佳代を誘って、上の
階をぶらぶら見に行った。

 階段を上がってエントランスロビー脇のお
土産物売り場に入ってみた。

 明日葉や大島牧場産のクッキーなど大島名
物が売られていた。

「明日葉ってなあに」
「明日葉っていうのは、大島の名物の野菜だ
よ。すごく生命力の強い葉っぱで、今日収穫
しても、明日にはもう新しい葉っぱが出てく
るから、明日葉っていうんだよ」

 二人は、しばらくお土産屋さんに並んだお
土産をチェックした後、何も買わずにお店を
出た。


「アイスクリームを食べようか」
「うん」

 お店の端のほうにソフトクリームを売って
いるところがあった。
 隆と佳代は、そこに行くと、ソフトクリー
ムを2個買った。二人は、そのソフトクリー
ムをなめながら、下の階に戻った。

「あら、なんだか二人だけで美味しそうなも
の食べているじゃん」
「食べるか?」

 隆は、うらやましそうにしていたルリ子に
自分の分のソフトクリームを差し出すと、ル
リ子は少しなめさせてもらっていた。

「あ、どうして、これから食事だというのに
そんなもの食べているの」

 麻美は、ソフトクリームをなめている隆に
注意した。
 注意していた麻美だったが、佳代から、自
分の分のソフトクリームを差し出されると、
それを一口だけちゃっかりなめさせてもらっ


ていた。

「ラッコさん!」

 レストランの方から、店員さんの呼ぶ声が
した。ラッコのメンバーたちの食事の順番が
周ってきたようだった。

「え、ラッコさん?」

 隆は、レストランの店員にラッコと呼ばれ
たことに、不思議そうにしていた。

「へへ、面倒だから、ラッコって名前で予約
しちゃったの」

 麻美は、隆に答えた。

 皆は、レストランに入ると、ウェイトレス
さんに案内されて、席についた。
 隆は、まだ食べ切っていないソフトクリー
ムを手に持っていた。

「ほら、だから食事前にそんなもの食べたら
駄目って言っているのに」


 隆は、麻美にまた怒られていた。

「ルリちゃん、残りを食べてあげて」

 麻美に言われて、若いルリ子は、隆の残っ
ている分のソフトクリームをぺロリと平らげ
ていた。

「お刺身!」

 美味しそうな刺身中心の海鮮料理が運ばれ
てきた。ラッコの皆は、かんぽの宿の豪華な

食事をお腹いっぱいになるまで食べ尽くした
のだった。

第66回につづく


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