イルカの群れ

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第96回

「なに?イルカがいるの!?」

 船内でギャレーの片づけをしていた麻美が
佳代に呼ばれて出てきた。

 佳代が、船内にいた麻美のことを、イルカ
がいるよって呼びに来てくれたのだった。

「うわ!なに、すごい数じゃない」

 デッキに出た麻美は、海にいるイルカたち
を見て驚いた。

 ルリ子がデジカメで写真撮りたいからって
イルカに呼び掛けたら、まるで、それに応じ
たように、沖で泳いでいたイルカたちが、ラ
ッコのほうに近づいて来ていたのだった。

「なんかラッコの側を泳ぐイルカって言葉が
おもしろいな」


「そうだね。イルカとラッコが一緒って、ラ
ッコがイルカに食べられちゃわないかな」

 洋子と隆は話していた。

 ラッコに寄って来たイルカたちは、嬉しそ
うにラッコの横を併走していた。
 中には、ラッコのすぐ真下の船底を、くぐ
って見せているイルカもいた。

「こんなに近づいてきて、ヨットにぶつから
ないでくれよって、ルリは、ちゃんとイルカ

に伝えてくれよ」

 隆は、イルカの写真を撮り続けてるルリ子
に言った。

 麻美は、佳代や洋子と一緒に、ヨットの周
りを飛び回っているイルカたちをずっと眺め
ていた。

「イルカって、こんなに人に慣れているの」
「人というよりも、イルカは船が好きみたい
で、船と一緒に並んで泳ぐことって多いみた


いだよ」

 隆は、麻美に聞かれて、答えていた。

 結局、イルカたちは、三浦半島の剣崎辺り
まで、ずっとラッコと一緒に併走してついて
きた。

 剣崎の辺りまでやって来ると、イルカたち
は、一匹ずつ、またUターンして、最初に出
会った辺りに戻っていった。

「バイバイ!元気でね」

 イルカたちは、東京湾の入り口に戻って行
き、ラッコは、東京湾の内側、横浜マリーナ
を目指して進んでいった。

 ここでイルカたちとは、お別れだ。

第97回につづく