おやすみ

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第83回

 船が出航すると、すぐに麻美はキャビンに
入って眠ってしまった。

「おやすみなさい」

 よほど、眠かったみたいで、揺れているヨ
ットの上だというのに、船尾のベッドでぐっ
すりと眠ってしまっていた。

 その横では、佳代も寝ていた。

 3時間ほど寝ると、佳代は、自分の番のウ
ォッチのため、起きあがった。
 佳代の起きる音で、麻美も眠そうな目をこ
すりながら起きた。

「麻美さん、まだ寝ていてもいいよ」

 佳代は、眠そうな麻美に言った。

「でも、ウォッチの順番でしょう」


「大丈夫。なにか必要だったら、麻美さんの
ことを起こしにくるから、それまでは寝てい
てもいいよ」

 佳代は、答えた。

 さすがに眠たかった麻美は、佳代のせっか
くの申し出を受け入れて、引き続き眠ってし
まっていた。

 佳代は、コクピットに出ると、ウォッチを
していた隆たちと交代でウォッチについた。

「寒いよ」

 交代のとき、隆は、暖かいコーヒーの入っ
たカップを、佳代に手渡しながら伝えた。
 Tシャツ、短パンでウォッチをしていた夏
のクルージングに比べると、9月のナイトク
ルージングは、気温も涼しくなっていた。

 佳代も、しっかりとカーディガンを着ての
ウォッチとなった。

「中で舵を取らない?」


 しばらく、外のデッキで寒さを我慢しなが
ら、舵を取っていた佳代は、一緒にウォッチ
しているルリ子に聞いた。

「そうだね。じゃ、私がしばらく外の舵を握
っているから、佳代ちゃんは、先に中に入っ
て、中の舵を取りに行ってくれる」

 佳代は、船内のパイロットハウスに行くと
そこのステアリングを握って、舵を取った。

「ルリちゃん、舵を取ったよ!」

 船内から、佳代が大声でデッキのルリ子の
ことを呼ぶと、ルリ子も船内に入って来た。

「うわ!暖かいね」

 船内、パイロットハウスのサロンに腰かけ
たルリ子は、寒さで涼しくなった自分の手を
こすり合わせながら、船内の暖かさに感動し
ていた。

第84回につづく