漁師の友だち

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第91回

 岡田港に入港するヨットを案内してくれて
いるおじさんがいた。

 ラッコ、マリオネットそして海王が、岡田
港に入港すると、港の岸壁で大声で案内、ヨ
ットやボートの誘導をしているおじさんと遭
遇した。

「そっちのヨット、3艇での入港か!?」

 そのおじさんは、港内をうろうろしている
ラッコたちに声をかけてきた。

 隆が、おじさんに負けないぐらいの大声で
返事をすると、おじさんは、3艇を漁港の隅
に空いていた岸壁のところに誘導した。

 まず一艇が、そこの岸壁に横付けして、残
りの2艇は、その横付けしたヨットの横に順
番に停めろということらしい。


 ラッコたち3艇は、おじさんの誘導に従っ
て、その場所に停泊した。

「アンカーを打たなくていいから楽だね」

 佳代が言った。

 いつものクルージングだと停泊するときは
アンカーを打って停めているが、今回は、岸
壁に横付けできるので、アンカーを打たなく
ても、舫いロープだけで停められた。

「なに、どこから来たの?」
「横浜。昨日は波浮の港に泊まって、そこか
ら岡田に来ました」

 隆は、漁師のおじさんに声をかけられて、
話をしている。

 麻美も、いつの間にか隆たち二人の話に加
わっていた。

 おじさんは、漁師で、自分の船も岡田の港
内に停めているらしい。


 今朝早くに、漁に出て、魚を獲って戻って
来たそうだ。
 漁が終わって、戻ってきたら、レジャーボ
ートがたくさん入港してきていたので、午後
からは、こうしてレジャーボートの停泊の誘
導をずっとしているのだそうだ。

「大変ですね」
「ああ、でも、あんたたちで、もう港いっぱ
いだから、この後に来るレジャーボートには
全て入港を断って、波浮のほうに周ってもら
うつもりだよ」

「そうなんですか」
「うん。あんたたちは、入港できてラッキー
だよ」
「早目に、波浮を出てきてよかったね」
「ああ、船は日の出と共に、早く出航して、
日が沈む前には、港に入港するようにするの
が一番さ」

 麻美に、漁師のおじさんが答えた。

「あんたたち、これから岡田の町を観光する
のか?」


「観光は、もう夕方だし、しないけど、どこ
かお風呂入れるところには行って、お風呂に
入ってこようと思っています」
「おお、そうか。あと一時間ほど、待っても
らえれば、俺が車で送っていてやるぞ」

 漁師のおじさんは、一時間後に、港の仕事
が終わったら、隆たちを、自分の車で、お風
呂まで送ってくれることになった。

第92回につづく