釣り大会

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第135回

 麻美は、キャビンの中から釣り道具を持っ
て出てきた。

「ルリちゃん、釣りしない?」

 麻美は、釣り道具を見せながら、ルリ子を
誘った。

「なに、めずらしいじゃない。麻美が釣りを
するなんて。いつも、俺が魚釣りしていると
お魚さんが可哀そうとかって言っているくせ
に」

 隆が言った。

「いったい、いつの話をしているのよ。ずい
ぶん昔の小さい頃の話じゃない、それは」

 麻美は、恥ずかしそうに答えた。


「ええ、隆さんと麻美ちゃんって幼馴染みな
んだ」
「そう。かなりの幼馴染み」

 麻美は、ルリ子に答えた。

「腐れ縁ってやつだな」

 隆は、麻美の持ってきた釣り道具を見なが
らつぶやいた。

「なんかね、今回のクルージングは、釣り大

会があるんですって。向こうの目的地に到着
するまでの間に、船で釣りをして、釣れた魚
を、夜のパーティーのときに見せると、一番
多く釣ったヨットには、賞品がもらえるらし
いのよ」

 麻美は、横浜マリーナのスタッフから聞い
たことを皆に伝えた。

「へえ、今年は、そんなイベントあるんだ」

 隆が、ルリ子より先に、麻美が持ってきた


釣り道具を受け取ろうとした。

「隆は、こっちの釣り道具でいいでしょう」

 麻美は、隆が取ろうとしていた一番りっぱ
な釣り道具は、隆には渡さずに、ルリ子に渡
した。

「隆は、釣りが下手でしょう。どうせ釣れな
いから、こっちの道具でいいでしょう」

 隆は、麻美から小さい釣竿を手渡された。

 ルリ子は、麻美から受け取ったトローリン
グ用の一番釣れそうな釣り道具をセットして
釣りを始めていた。

 雪もやって来て、余っている釣竿を受け取
って、釣りを始めた。

「この餌を、こんな感じで付けるんだよ」

 隆が、自分の分の疑似餌をつけながら、雪
にも教えていた。


「もっと、魚が寄ってきやすそうに、ゆっく
りとこんな風に揺らすんだよ」

 隆が、雪に釣り方を実演してみせた。

「雪ちゃん、隆に教えてもらうよりも、ルリ
ちゃんに教えてもらったほうが良いかもよ。
隆って、プロっぽい感じで釣っているように
見えるだけで、殆ど釣れたことないから」

 麻美は、佳代と一緒に、釣竿で釣りしなが
ら、雪に言った。

「そうか。じゃ、ルリちゃんに教えてもらお
うかな」

 雪が、麻美と話している。

 隆は、釣り糸をたらしながら、麻美のやつ
に、勝手なこと言われているけど、ぜったい
に大物を釣り上げて、皆を見返してやると、
ムキになって釣っていた。

第136回につづく