はじめての日本人

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 今朝の岡島さんのお母さんは、朝から大忙
しだった。
 なにしろ子どもたち4人全員を新しい学校
に案内しなければならなかったのだ。学校へ
案内するのは一番上の長男、長女そして次女
だけだったが、末っ子のまだ幼稚園の三女を
家に一人置いておくわけにはいかない。

 彼らが行く学校は家から歩いても10分ぐ
らいのところにあるPS24、ニューヨーク
公立第24小学校だ。
 この小学校の校舎の3階にはナーサリース

クール(幼稚園)もある。
 お母さんは、まずは末っ子の理香をナーサ
リースクールに連れていった。
 理香は、アメリカに慣れるまではしばらく
は自宅待機させるつもりだったが、学校で案
内の先生に幼稚園もありますよと言われ、理
香に教室を見せるだけは、見せておこうと思
いなおしたのだった。
 本当は見せるだけのつもりが、意外にも理
香はナーサリースクールにいた日本人の女の
子と仲良くなってしまい、一緒に授業を受け
たいというので教室においてきてしまった。


 その後で、良明、美香に由香を連れて同じ
校内の小学校の事務室に行った。
 そこで由香は1年の担任の先生を紹介され
ることとなった。ナーサリースクールでは、
妹の理香が、たまたま教室にいた日本人の女
の子と日本語で話し、仲良くなっていたのを
みて、ずっと私も最初に出会うのは日本人が
良いと思っていたのに、いきなりアメリカ人
の先生との対面になってしまった。
 由香は身振り手振りで先生に挨拶する。

「オーケー、理香。では教室に行って授業を

受けましょうか」

 先生は由香を連れて自分たちの教室へと行
ってしまった。

 後には良明と美香がお母さんと一緒に残さ
れる形となってしまった。
 理香も由香もわりと平然としてアメリカ人
の先生にくっついていってしまったな、由香
本人はそうでもなかったのかもしれないが、
少なくても美香にはそう見えたのであった。
 でも美香は英語がわからないし不安でお母


さんの手を思わずぎゅっと握ってしまった。

「こんにちは」

 美香は英語しか話せないアメリカ人の先生
が出てくるとばかり思って、不安でお母さん
の手をしっかり握っていた。
 しかし、事務室の奥から出てきたのは日本
人の女の先生だった。少し恥ずかしくなって
慌ててお母さんの手を外した。

「こんにちは。中山ゆりこといいます」

 その先生は岡島さんたちに挨拶をした。

 もしかして、この先生が私の担任の先生?
担任が日本人の先生だったら、私って由香や
理香よりもめちゃラッキーじゃない!と美香
は勝手に思っていた。

 ゆりこ先生はマンハッタンのアパートメン
トに住んでいて、クイーンズにある全日制の
日本人学校とここPS24の両方の学校を週
2、3日ぐらいずつで掛け持ちしている。


 ゆりこ先生は先生といっても本当の先生で
はない。両方の学校の学校事務の事務作業を
担当している事務の先生だ。日本人が多く転
校してくるこの学校では日本人生徒のための
日本語の学校事務ニーズもあるのだった。
 今度新しく岡島さんたち日本人が転校して
くるというので、ゆりこ先生が美香たちの前
に挨拶にやって来てくれたのだった。

 今度こそ本当の美香のクラスの担任のミラ
ー先生がやって来た。
 ミラー先生は、日本人ではなくアメリカ人

の先生、当然日本語は通じず、話しは英語オ
ンリーの先生だった。
 由香、理香の妹たちはアメリカ人の先生で
も普通にくっついて行ってしまったが、美香
は英語しか話せない先生に緊張していた。

「教室まで先生と一緒に行きましょうか」

 ゆりこ先生が緊張している美香に手を差し
伸べた。美香は黙って頷いてゆりこ先生の手
を握っていた。ゆりこ先生は美香の手をしっ
かり握ると、ミラー先生と一緒に3年生の教


室に向かって行ってしまった。

あとには、良明一人だけがお母さんと一緒に
残ることとなった。

「アメリカンスクール」につづく