アメリカンスクール

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 良明の担任になる先生はロールパン先生と
いった。ショートカットの金髪の妙齢なご婦
人の先生だった。日本語は通じない。
 ロールパン先生は手招きで良明を呼んだ。
ロールパン先生は、良明がついて来ているの
を確かめると歩き出した。
 これから自分の入るクラスの教室に行くの
だろうと良明は予想した。
 妹の美香は緊張してアメリカ人の先生の後
について行ったが、良明はそれほど緊張して
いなかった。

 それというのも昨日の野球中に椎名たち仲
間から学校のクラスのことを予め聞いていた
のだった。

 この学校に転校してくる日本人は、各学年
毎に日本人同士で一つのクラスにまとめられ
て配属されていることを知っていた。
 だから日本人である良明は椎名たちと同じ
5年生のクラスになるだろうことは予めわか
っていた。
 椎名のクラスには、椎名以外にも、たけし
や隆一など昨日グランドで一緒に野球してい


たたくさん同級生がいるのだ。
 クラスに行けば日本語の通じる相手がたく
さんいる。なんにも心配することはない。

 ゆみたちクラスの生徒たちは先生が来るの
を待ちくたびれていた。そんなとき、ようや
くロールパン先生はやって来た。

「皆さん、おはようございます。遅くなって
ごめんなさい」

 ロールパン先生は、教室に入ってきてクラ
スで待っていた自分が担任の生徒たちに言っ
た。

「今日は皆と一緒にお勉強する新しいお友達


がいます」

 ロールパン先生は良明を教室の中に招きい
れた。

「彼の名前はヨシュ・・ヨシュ・・なんて読
んだらいいのかしらね・・ヨシュワキー君と
いいます」

 ロールパン先生は皆に良明のことを紹介し
た。紙に書いてあった彼の日本名が読みづら
かったみたいで、ロシア人のような名前にな

ってしまっていた。
 後ろのほうに座っているクラスの一人が手
を挙げて先生に質問した。

「ヨシュワキーは日本人ですか?どうしてう
ちのクラスなんですか?」

 ロールパン先生はその質問に答えた。

「ヨシュワキーは日本人です。日本人の子は
普通なら隣りのクラスの日本人がいっぱいい
るクラスになるのですが、」


「向こうのクラスは、このところ大勢日本人
の子が多く転校してきてしまい、いっぱいに
なってしまいました。なので、うちのクラス
に来てもらうことになりました」

 ロールパン先生はそう答えた。

「もちろん、うちのクラスは優等生のクラス
ということはわかっています。そこで先ほど
彼にはうちのクラスの授業についていけるか
どうかの数学の試験を受けてもらいました」

 ロールパン先生は驚いた表情をしてみせな
がら皆への話を続けた。

「数学の試験ですが・・彼は満点でした!

 ロールパン先生は答えた。

「それに、このクラスにはゆみがいます。ゆ
みは日本人ですからちょうど良いですよね。
皆さん、仲良くしてあげてくださいね」

 と先生は話を続けた。


「日本語を教えて欲しいです」

 シャロルが転校生のヨシュワキー君に質問
した。

「今はまだ日本から来たばかりで、英語がよ
くわからないみたいですが、きっと教えてく
れると思いますよ」

 良明に代わってロールパン先生がシャロル
の質問に答えた。

「でも、あなた。日本語ならすぐ隣の席にゆ
みがいるじゃないですか」
「だって、ゆみは日本語下手だもの」

 シャロルに代わって、マイケルがロールパ
ン先生に返事した。ゆみは日本語下手だもの
というマイケルの返事にクラスじゅう大笑い
になっていた。

 あたしも日本人なんですけど。お兄ちゃん
と毎日、日本語で話していますけど、ゆみは
クラスの皆に自分の日本語を笑われたことに


心の中で少しむくれてしまっていた。

「それではヨシュワキー君の席は…」

 ロールパン先生は、教室の中を見回してか
らシャロルに言った。

「シャロルは悪いけど、マイケルの隣りの空
いている席に移動してくれる」

 シャロルは、ゆみの隣りの席から前のマイ
ケルの隣りの席に移動した。

「ヨシュワキー君は、日本人同士だしゆみの
隣りの席に座ってもらいましょう」

 ロールパン先生は、そう言うと良明のこと
をゆみの隣の席に座らせた。

「英語がわかるようになるまでの間は、日本
人のゆみに通訳してもらいましょう」

 日本人のゆみに日本語で通訳してもらうと
いうロールパン先生の言葉に、ゆみは少し嬉
しくなった。そして、ゆみは隣りの席に座っ
た転校生のヨシュワキー君に日本語で挨拶し


てみた。

「こんにちは、ヨシュワキー君。あたしはゆ
みといいます」

 良明は、初めてのアメリカの学校のせいか
緊張してゆみの言葉にも黙ったまま何も言わ
ずに座っていた。

「ゆみの日本語ぜんぜん通じてませんけど」

 それを見て、マイケルがゆみのこをを笑っ

ていた。
 もしかしたらヨシュワキー君と仲良くなっ
たら日本語で一緒に話せて、あたしの日本語
も上手になれるかもしれない。
 そう思ったゆみは、ヨシュワキー君と仲良
くなれたらいいなと思っていた。

「新しいお友達」につづく