船酔い

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第116回

 海は、北風で少し荒れていたが、乗員は皆
元気に勝山港を出航した。

 勝山港を出て、しばらく沖に向かって走っ
て行くと、東京湾の本船航路に突入する。

「さあ、本船航路だ。大きな船に気をつけな
がら渡ろう!」

 隆は、皆に言った。

 北風でヨットは、右に左に、横揺れがけっ
こう大きかった。

「大きな波は、なるだけ横から受けないよう
にして、正面から波にあわせて受けるように
すると、横ゆれが少なくて済むよ」
「はい。このまま、まっすぐ舵を維持して進
めばいいのよね」

 隆に言われて、舵を握っていた雪が、必死


でステアリングを取っている。
 皆の中では普段あまり、舵を握らない雪な
のだが、めずらしく自分からステアリングを
握っていた。

「洋子ちゃん、もう少しセイルを引いてもら
えるかな」
「了解!」

 雪に言われて、洋子は、セイルのシート、
ロープを引いて、セイルを船体の内側に引き
こんだ。

「こんなに海が荒れているというのに、なん
か、今日は雪、ずいぶん元気じゃないか」

 隆は、洋子に指図をしながら、ステアリン
グを右に左に回して、舵を取っている雪に向
かって言った。

「うん。なんか楽しくない?この揺れってワ
クワクしてくる」

 雪は、元気よく隆に答えていた。


「なんだよ。雪って、けっこうMっ気が多い
のかもしれないな」

 隆は雪に言った。

 それとは、逆に麻美が言葉少なくなってき
ていた。

 それまでは、元気にセイリングしている雪
たちを、笑顔で見ていた麻美が、だんだんと
言葉少なくなっていたのだった。
 やがて、佳代に何かひそひそと話をすると

二人は、キャビンの中に入ってしまった。

第117回につづく