修正順位

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第128回

 レースを終えて、マリオネットは、横浜マ
リーナに戻って来た。

「今日のレースは、速かったじゃないの」

 横浜マリーナに戻ると、中野さんは、マリ
ーナ内で出会う人皆に褒められていた。

 いつもレースでは、殆ど最下位に近いとこ
ろでゴールしているので、今日のレースの躍
進は、よほど目立ったようだった。

 佳代と隆は、マリーナスタッフに上架して
もらったマリオネットの艇体の上で、坂井さ
んや松尾さんにセイルのしまい方のレクチャ
ーをしていた。

 セイルは、なるだけシワにならないように
折り目が付かないように、ふわっと優しく畳
むようにと教えていた。


「セイルは、女性のことを撫でるように優し
く取り扱うように」

 隆は、なんとなく下品な気がして、あまり
言いたくなく、例えに使ったことがないのだ
が、ヨット歴の長いベテランのヨットオーナ
ーのおじさんたちの間では、初めてヨットに
乗ったクルーなどに、セイルの畳み方を教え
る際には、よく例えとして使われていた。

「女性を撫でるように、なんだそうだよ。俺
がクルーの頃に、よくそう教えられた」

 隆が坂井さんや松尾さんに説明すると、そ
の説明でなんとなくおじさんたちは一番納得
するようだった。

「片付け、終わった?」

 隆たち、本日のマリオネットの乗員がヨッ
トの片づけを終わった頃に、ルリ子がマリオ
ネットにかかっている脚立を登って、上がっ
てくると隆に声をかけた。

「ああ、終わったよ」


「そう、良かった。お昼の食事の用意ができ
たから、皆を呼びに来たの」

 ルリ子が言って、皆は、マリオネットを降
りて、ラッコのキャビンの中に行った。

 途中、暁のオーナーの望月さんと出会った
ので、望月さんにも、お昼ごはんを一緒にど
うかとラッコのキャビンに誘った。

 ラッコのキャビン内に入ると、お昼ごはん
の美味しい匂いが、キャビンの中じゅうに漂

っていた。

「お昼、できたか?」

 隆が、エプロン姿の麻美に声をかけた。

「出来たから、早くちゃんと手を洗ってきて
席に座りなさい」

 麻美が返事した。

 隆たちマリオネットに乗って、レースに参


加していた皆が、トイレのシンクで手を洗っ
て来てから、お昼の食事が始まった。

 今日のお昼は、パスタとサラダだった。

「順位、どうだった?」

 望月さんが、中野さん、隆に聞いた。

「さあ、上位には入れたと思うのですが、結
果は何位なのでしょうね」

 隆が答えた。

 ルリ子が、今日のレースの結果を記録して
いる用紙を持ってきて、隆に渡した。

 ルリ子から受け取った隆は、チラッとレー
ス結果を見てすぐに、望月さんに手渡した。

「どれどれ」

 望月さんは、用紙を見ながら、各艇のレー
ス結果を計算し始めた。


 隆は、望月さん計算している姿に全く興味
を持っていなかったが、ルリ子の方は、レー
スの計算方法に興味深々だった。
 ずっと望月さんの計算を確認していた。

第129回につづく