レースの計算方法

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第129回

 望月さんは、レース結果が書かれた紙を見
ながら、複雑な計算をしていた。

「なんだか、計算が複雑そうね」

 望月さんが、ラッコに持ってきてくれた差
し入れの焼き肉を、網を出して焼きながら、
望月さんの計算している紙を覗き込みながら

麻美が言った。

 ヨットレースは、20フィート前後の小さ
なヨットから30フィート、40フィートの
大きなヨットまで、いろいろな大きさのヨッ
トが参加している。

 小さなヨットよりは、当然大きなヨットの
ほうが、速く走れたりする。

 と思っていると、小さなヨットでも、やた
らと背の高いマストを付けていて、そこに大


きなセイルを張っていたりするヨットもあっ
たりする。

 普通に、一斉にスタートしてからゴールす
るまでを競うだけでは、サイズの大きなヨッ
トやセイルの大きなヨットばかりが、いつも
レースで勝ってしまうことになってしまう。

 それでは、不公平なので、スタートしてか
らゴールするまでの到着時間を計って、そこ
に、さらに各ヨットの全長やセイル面積の大
きさなどを計測して、それらを統合して、ど

のヨットが優勝するのかを決める。

 だから、ゴールが一番先にしていても、計
算の結果、2位になってしまったりする場合
もあったりするのだ。

 スピードの速いヨットは、自分のヨットの
全長やセイル面積などまで全て計算して、さ
らに2位以下のヨットに差をつけてゴールし
なければ優勝できなくなってしまうのだ。

 この全長やセイル面積などによって、各ヨ


ットに付けられたハンディキャップのことを
ヨットレースでは「レーティング」と呼んで
いる。

 レーティングは、レースが始まる前に、レ
ース本部より各参加艇に発表されるので、レ
ース参加者たちは、そのレーティングの高さ
低さによって、今回のレースは、ハンディキ
ャップが高くなってしまったとか、低くてラ
ッキーだ、などと喜んだりしているのだ。

 本格的なヨットレースでは、このレーティ

ングの決め方は、ふつうに参加艇の全長やセ
イル面積などを分析して出しているのだが、
横浜マリーナのクラブレースでは、レース艇
クルージング艇などマリーナ保管艇の皆が、
クラブレースを楽しめるように、去年までの
通算成績やレースの参加頻度、乗員のセイリ
ング技術なども加味して、勝手にレーティン
グを決めているのだった。

 そうしないと、いつも暁などの速いレース
艇ばかりが優勝してしまい、マリオネットの
ようなモーターセーラーなど足の遅いヨット


は、いくらレースに参加しても優勝どころか
上位にも入れなくなってしまうのだ。

 クラブレースなので、横浜マリーナにヨッ
トを保管している全てのヨットが、平等にレ
ースを楽しめるようにしようと配慮している
のだった。

第130回につづく