はじめての診察日

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

 次の日の朝、目が覚めた。

「ごはんです」

 いつも、朝ごはんは、出来るだけ病院に入
院したときと同じ朝8時半に近い時間に食べ
るようにしているのだが、もちろん極力、病
院の食事の時間に近い時間に食べるようにし
ているだけで、実際には「ずれていく食事時
間」章のように、ぜんぜん近くない時間に食
事をしなければならない日も多かったが。

 その日は、いつもよりも1時間も早くに朝
ごはんを食べ終わって、朝のユリーフのお薬
を1錠飲んだ。

「たぶん、病院まで歩いたら1時間ぐらい掛
かるぞ」

 その日は、病院を退院してから、はじめて
の外来での診察日だった。

 普段だったら、うちから病院の手前のとこ
ろにあるイオンまで歩いても15分と掛から


ない。
 しかし、今は、おしっこの袋をぶら下げて
歩いているのだ。
 しかも、病人のせいなのか、せかせかと普
通のスピードで歩くことが出来ない。
 退院以降、どうしても外に出るときは、ダ
ラダラと遅いスピードで歩くしか出来なくな
っていた。

 診察の予約時間は、朝の9時だ。今の自分
の身体で、うちから病院まで歩いたら、1時
間ぐらいは掛かってしまうだろう。

 さらに、遅れたときの余裕を持っても・・
かなり早くに、うちを出なければ、時間まで
に病院に到着出来なくなってしまうぞ。

 そう思ったので、かなり早めに起きて、ダ
ラダラと一生懸命できる限り急いで、パジャ
マから着替えて、朝ごはんを済ませたのだ。

「それじゃ、行ってきます!」

 私は、愛猫に挨拶をして、予約時間の朝9
時よりも、かなり早い時間に、うちを出発し


た。はじめての外来での診察日だ。
 いったい、どんなことをやるのだろうか?
さっぱり見当もつかなかった。

「どこに行けば良いのですか?」

 私は、予約時間よりも30分ぐらい早い時
間に、病院に到着すると、1階の受付の窓口
で、退院の日にもらった予約の紙を見せなが
ら、尋ねた。

「この紙をお持ちでしたら、そのまま2階の

泌尿器科の受付にお出し下さい」

 受付の女性が、私に説明してくれた。

 泌尿器科の受付って、いったいどこなのだ
ろう?と疑問に思ったが、とにかく2階に上
がってみれば、どこかわかるだろうと脇に付
いていたエスカレーターで2階に上がる。

「あれ、ここの2階って、なんだか見覚えが
ある」


 前に、入院していたとき、看護師と一緒に
入院棟からスターウォーズの秘密基地みたい
なエレベーターを使って、泌尿器科の先生に
会いに来たところだった。

 私は、そのときのことを思い出していた。

「確か、ここの廊下をまっすぐ行った一番先
の15番の部屋に行って、そこの前で看護師
と待っていたら、泌尿器科の先生に診察室の
中から呼ばれたのだった」

 そのときのことを思い出した私は、そのと
きと同じ一番奥の15番の部屋を目指して、
歩いていた。
 でも、今日もまた、そこの同じ部屋とは限
らないだろうと、途中で思った私は、たまた
ま、その途中にあった受付カウンターにいた
看護師の女性に、聞いてみた。

 私の診察は、またあの時と同じ15番の部
屋で良かったみたいだ。しかし、そこへ行く
前に、その受付カウンターで、診察券と予約
票を提出するようにと言われた。


「診察券と予約票・・」

 予約票は、ちょうどさっき1階で場所を聞
いたときに見せるのに、手に持っていたので
すぐに提出できた。
 後は診察券だ。バッグの中を探って、お財
布を取り出すと、お財布の中に収納してある
たくさんのポイントカードや銀行カードの中
から、病院の診察券を探し出して提出した。

「あと、保険証を見せて下さい」
「保険証は、前回に見せましたけど・・」

 私は、再び財布の中から自分の保険証を探
し出しながら、受付の看護師に言うと、保険
証は、月が変わる毎に、毎回提出するものな
のだそうだ。

「ありがとうございます」

 看護師は、私が手渡した保険証をコンピュ
ータと確認し終わると、保険証を私に返しな
がら、言った。

「それでは、奥の15番の部屋の前でお待ち


下さい」

 看護師に指示されて、私は廊下を一番奥ま
で進み、15番の部屋の前にたどり着いた。
 まだ朝早いというのに、15番の部屋の前
に行くまでの間の廊下に設置されているベン
チには、たくさんの患者さんたちが腰かけて
診察の順番を待っていた。

 私も、15番の部屋の前に設置してあるベ
ンチに腰かけて、目の前の診察室から先生に
呼ばれるのを待っていた。

「そういえば、入院中に、ここに泌尿器科の
先生に診てもらうために来たときも、このベ
ンチの、ここの場所に腰かけていたな」

 あのときは、私が、ここのベンチの端っこ
に腰かけて、すぐ脇の、この壁際に一緒に付
き添って、ついてきてくれた看護師が立って
いたなと思い出していた。

「採血検査」につづく