採血検査

ある日、突然どうやってもおしっこが出なくなった・・とてつもなく巨大なアレ- 前立腺肥大症 -との3ヶ月間にわたる大闘病記。

 ずっと、目の前の15番の部屋から先生に
呼ばれるとばかり思っていた。
 しかし、15番と14番?、15番の隣の
部屋の間には、細い廊下があった。
 その廊下の奥から赤いファイルを持った青
い服を着た看護師が、こちらにやって来た。

「診察の前に、はじめに採血検査を受けてき
てください」

 その看護師は、ベンチに腰かけている私の
前までやって来ると、話しかけられた。

 採血検査と聞いて、私の頭には、真っ先に
注射が浮かびあがった。
 注射をしなければならないのか、小さい頃
から注射だけは苦手な私は、少し身構えてし
まっていた。

「このファイルを持って、採血に行ってきて
ください」

 看護師は、手に持ってきた赤いファイルを
私に手渡した。


「はい、採血って、どこの部屋に行けばいい
ですか?」

 私は、赤いファイルを看護師から受け取り
ながら、質問した。

「ここの廊下をまっすぐ、さっき受付をした
ところまで戻ってください。
 そこの受付のところを左に曲がって、ここ
のちょうど反対側なんですけど、左を曲がっ
て突き当たったら、そこをさらに左に曲がっ
てください。

 左に曲がると、トイレがあります。そのト
イレの先が採血の場所です。
 そこで、このファイルを渡してもらえれば
採血してもらえます」

 私は、看護師からもらった赤いファイルを
持って、廊下を先ほどの受付まで戻り、そこ
を左折、突き当たりの壁一面が大きなガラス
張りの窓になったところまで突き進んだ。
 ガラス張りの窓からは、病院の前の大通り
がよく見えていた。
 そこを、さらに左に曲がると、確かに男女


別のトイレがあった。そのトイレの前を通り
過ぎていくと、窓口があった。

 窓口の人に、ここが採血のところかどうか
敢えて聞く必要はなかった。
 窓口の人の背後には、私の苦手な注射する
ときのセットが置かれているのが見えていた
のだった。

「お願いします」

 私は、看護師からもらった赤いファイルを

差し出すと、代わりに番号札を渡されて、そ
の番号を呼ばれたら、中に入るようにと指示
された。
 私が、受付の前に置かれている椅子に腰か
けようかどうしようかしているうちに、すぐ
に私の番号が呼ばれた。

「はーい!」

 私は、採血室の中に入った。

「腕をめくってから座ってください。何かア


レルギーとかはありますか?アルコールは大
丈夫ですか?」

 私は、服の袖をめくってから、腕をカウン
ターテーブルの上に置かれたクッションの上
に置いてから、カウンターの前の椅子に座っ
て、首を大きく横に振った。

「それでは、ちょっとチクッとしますね」

 看護師は、私の腕をアルコールの付いたガ
ーゼで拭いた後、止血止めのバンドを上腕部

に巻いた。
 次に来るのは、注射器だ。そう感じた私は
注射のほうを見ないように、顔を反対側に向
けて、目をつぶった。

 看護師は、私が顔を背けたのを確認して、

「あっ、注射がこわいのですね」

 と、私の気持ちをすぐに察知してくれた。

「少しチクッとしますよ・・」


 看護師から、その言葉を聞いただけで、な
んとなく注射の針が刺さって痛いような感じ
がしてしまった私は、

「痛っ」

 と小さくつぶやいてしまっていた。

「あ、まだ刺してませんよ・・」

 看護師が笑いながらつぶやいた後で、真顔
ですぐですから少し我慢してくださいと言っ

たその後にすぐ、チクッときた。
 私が、目をつぶったまま必死で我慢してい
ると、

「はい、終わり。15分ぐらい押さえたら、
もうこれは外してしまっても大丈夫です」

 看護師は、私の腕、ちょうど注射の針を刺
したところにガーゼをテープで止めると、採
血は終わりになった。

「もう戻って良いのですか?」


 看護師が頷いて、私は、自分の腕のガーゼ
が外れないように手で押さえながら採血室を
後にした。
 採血室を出ると、ここに来たときの道の、
右には曲がらずに、左方向へ向かっていた。

 来たときと同じルートを通らなくても、左
方向に突き当たったところを、さらに左へ曲
がれば、また15番の部屋の前に出れるので
はないかと考えていたのだ。
 そして、その考え通りに突き当たったとこ
ろを左折して、生理検査室の前を通り越して

直進していくと、想定通りに15番の部屋に
戻ることが出来た。

「今日は生理検査室が開いていてよかった」

 左折したところの生理検査室前の入り口と
出口には、扉が付いていて、もし生理検査室
が閉まっていたら、ここは通り抜けが出来な
いところだった。

「PSAの値」につづく