クラブレース
クラブレース

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第26回

 今日は、初夏で快晴だった。

 この日は、クラブレースの日だった。

 横浜マリーナでは、同じマリーナに置いて
いるヨット同士でレースを行って、各ヨット
同士の親善を深めている。
 同じマリーナのクラブ艇同士がレースを行

うので、クラブレースだ。

 横浜マリーナのクラブレースは、月に一回
のペースで、年間にして合計8回、レースが
行われている。
 各レースでの順位を合計して、一番になっ
たヨットには、その年の総合優勝艇として、
『横浜マリーナ特製優勝カップ』を贈呈して
年間総合優勝艇として表彰される。
 ヨットレースが好きなヨットの各オーナー
クルーたち乗員は毎年、優勝カップを目指し
ヨットレースの練習に必死になっていた。


「今日は、賑やかですね」

 クラブレース当日の朝、マリーナにやって
来た洋子は、麻美に言った。

 その日の朝は、今年のクラブレースの第一
回目ということで、クラブレースに参加する
ヨットの乗員たちで、横浜マリーナはいつも
の日曜日よりも人が集まってきていて賑やか
だったのだ。

「隆さん、うちのヨットもレースに参加する

んですか?」

 ルリ子が隆に聞いた。

 隆は、首を横に振ってレースには参加しな
いと答えた。
 隆のヨット、ナウティキャットは、内装の
造りは、木部を多用していて、ほかのヨット
よりも豪華な見た目だったが、それだけ船の
重量が重く、セイリングをすると、ほかのヨ
ットよりもスピードが出ずに遅かった。
 クラブレースに参加したところで、隆のヨ


ットでは、レースには勝ち目がなかった。

「参加しても勝てないとは思うけど、レース
には参加してみたいか?」

 隆は、自分のヨットに割り当てられた生徒
たち皆に聞いてみた。
 生徒たちは、ヨットに乗るようになってか
ら1か月ぐらい経って、少しずつだがヨット
の乗り方、操船方法もわかってきているみた
いなので、クラブレースに参加してみて、自
分たちの実力を確かめてみたいのではないか

と思い、質問したのだった。

 生徒たちの返事は、特にレースには参加し
てみたいって感じでもなかったので、海上で
ほかのヨットたちが参加するレースを少し観
戦してから、いつも通りにデークルージング
を楽しもうということになった。

「それでは、出航の準備をしようか」

 隆は、ほかの生徒たち皆と艇庫のヨットの
上に乗って、キャビンの中にしまってあった


ロープやセイルを出したり、結んであったロ
ープをほどいたり、出航の準備を始めた。
 1か月前だったら皆、まだロープの結び方
もわからず、隆が教えながらの出航準備だっ
たので、実質、隆が一人で全部の出航準備を
しているようなものだった。

 それが今は皆も、だいぶヨットの事がわか
ってきたため、前のセイル、真ん中のセイル
後ろのセイルとそれぞれに担当ごとに別れて
分担して出航準備できるようになっていた。

 皆は、出航準備に夢中になっていたので誰
も気づかなかったが、出航準備の途中で、麻
美の姿がどこにもいなくなっていた。

第27回につづく