レースに参戦

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第122回

 いつの間にか隆は、マリネットの舵、ステ
アリングを握っていた。

「隆君。舵を頼むよ」

 隆が、佳代と一緒にマリオネットに乗り移
るとすぐに、中野さんに声をかけられた。
 そして隆は、中野さんと交代で、マリオネ

ットの舵を取るようになっていた。

「佳代。セイルのトリム、ポジションを走る
ように修正して」

 佳代は、舵を握っている隆に言われて、バ
ラバラだったマリオネットのセイルトリムを
ロープなどを引いたり、出したりして、セイ
リング出来るように修正した。

 マリオネットのクルーの白井さんをはじめ
松尾さん、坂井さん夫婦も、佳代のやるセイ


ルトリムを見よう見まねで、手伝ってくれて
いた。

「佳代ちゃん、ヨットが上手だから、うちの
おじさんやおばさんの私じゃ、おじさんで動
き悪いかもしれないけど、一生懸命動くから
いろいろ指図してね」

 坂井さんの奥さんが、年下の佳代に、気を
配ってくれていた。

「もう少し、ヒールする?」

 セイルトリムでシートを引きながら佳代が
隆に聞いた。

「ああ、ヒール少ししたほうが良いかもな。
って、佳代も、俺に聞かないで、ヒールした
ほうが良いと思ったら、松尾君たちに言って
指図してやれよ」

 隆が、佳代に答えた。

「ほら、ヒールさせたければ、松尾君とかに
風下側に座ってもらえばいいだろ」


 自分よりも年上のマリオネットのクルーに
指図しづらそうにしていた佳代に、隆が言っ
た。

「おじさんたちにはちょっと言いづらいよね
こっちかな?ここに座ったらいい?」

 坂井さんの奥さんが、笑顔で優しく佳代の
頭を撫でてあげながら、自分の夫やクルーた
ちを連れて、風下側に移動した。

 マリオネットがヒール、少し傾いて走るよ

うになり、佳代のセイルトリムが調整される
と、今まで中野さんがうまく走らせられずに
スタートできなかったマリオネットの艇体が
順調に走り出して、ようやくスタートライン
を越え、ようやくレースをスタートさせた。

「スタート遅い!」

 マリオネットがスタートラインを越えると
ラッコの艇上、本部艇から見ていたルリ子が
ピーと笛を吹いて、スタートしたことを隆に
知らせた。


 ルリ子たちは、一番最後にスタートした隆
に、本部艇から遅いと冷やかしていた。

 隆は、それを苦笑して聞きながら、舵を握
ってスタートしていった。

第123回につづく