今度こそ、大物!?

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第137回

 ラッコは、三崎のすぐ側、城が島沖までや
って来ていた。

「釣りをしているうちに、いつの間にか、目
的地に到着してしまいそうだな」

 皆で、わいわい釣りを楽しんでいるうちに
三崎の側まで到着してしまっていた。

「結局、一番の大物は、タコ一匹だけだね」
「そろそろ、到着するから、釣竿は回収しよ
うか」

 皆は、釣り道具を片付けて、港に入港する
準備を始めていた。

 これから港に入港しようというそのときに
キャビンの中から無線が鳴った。

 麻美は、キャビンの中に入って、無線の応
答に答えた。


 無線の相手は、マリオネットからだった。

「隆!マリオネットが、三崎のすぐ側にいる
らしいんだけど、なにかに掛かってしまって
動けないんですって」

 麻美は、キャビンから顔を出して、船尾に
いる隆に伝えた。

 隆は、三崎の側と聞いて、どこかこの近辺
だろうと周りを見渡した。
 洋子も、佳代も、隆と同じように周りを見

渡してみる。

「あそこにいるよ!」

 一番、目が良い佳代が、真っ先にマリオネ
ットを見つけて、声を上げた。

「了解!漁師の網に引っかかったな」

 三崎の港の周りには、漁師が魚を獲るため
に、たくさんの網を浮かべていた。
 どうやら、マリオネットは、その網の一部


に囲まれて、動けなくなってしまっているよ
うだった。

「雪、代わろう」

 隆は、ステリアリングを握っていた雪と舵
を代わった。

 うかつにマリオネットの側まで寄ってしま
うと、今度は、ラッコまでもが漁網に掛かっ
てしまう。

 隆は、網に掛からないように、気をつけな
がら、マリオネットに近寄って行く。

 洋子たちは、サイドデッキから海の中、海
面を覗いて、網が無いかどうかを、舵を取っ
ている隆に報告する。

「ボートフックを持ってきてくれるか」

 隆は、麻美にキャビンの中にあるボートフ
ックを取ってきてもらった。


 マリオネットは、網の中に入ってしまった
といっても、まだ、網の手前のところにいる
だけなので、うまく漁網をボートフックで海
面の下に押しながら進めば、うまく脱出でき
そうだった。

 隆たちは、漁網をボートフックで押しなが
ら、ゆっくりとマリオネットを引っ張った。

「ボートフックで網を下に押しながら、ゆっ
くりと網を切らないように前進して」

 隆の言葉に、マリオネットの中野さんはエ
ンジンをかけようとした。

「だめ!エンジンはかけないで!」

 隆は、慌てて中野さんを止めた。

「ボートフックで船を漕ぐような感じで」

 マリオネットは、ラッコに引かれて、なん
とか無事に漁網から脱出できた。


 ラッコの舫いロープを長く伸ばして、マリ
オネットの先端に結び付け、洋子や佳代がゆ
っくり引っ張り出したのだった。

第138回につづく