表彰式、その後

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第141回

 横浜マリーナの今年度ヨット教室の卒業式
が始まった。

 今年度の横浜マリーナ・クラブレースの成
績発表と表彰式が終わった後だった。

 といっても、学校の卒業式と違って、卒業
生は羽織、袴ではなく、横浜から三崎までの

クルージングをしてきた後なので、普段着の
Tシャツにジーンズの卒業生ばかりだ。

 そんな中で、ラッコの卒業生、生徒たちだ
けは、お揃いの赤い蝶ネクタイをしていた。

「ほら、可愛いだろう」

 三崎港に到着してキャビンの中で一休みし
ていたときに、隆が余っていたリボンで作っ
た蝶ネクタイを、洋子に手渡していた。


 洋子は、もらった蝶ネクタイを首のところ
に付けた。

「可愛い!どうしたの?それ」

 洋子が付けている蝶ネクタイを見つけて、
ルリ子が聞いた。

「今日は、卒業式だから、せめてネクタイぐ
らいはして参加したらどうかなって俺が作っ
てやったんだ」
「可愛い!洋子ちゃんだけずるい」

「私もほしい」

 ルリ子が言って、結局、隆は、皆の分の蝶
ネクタイを作るはめになってしまっていたの
だった。

「はい、それでは次は、ラッコに配属になっ
た生徒さんたち」

 ステージの上の横浜マリーナ理事長から呼
ばれて、ラッコの生徒たちは、ステージに上
がった。


 理事長が、一人ずつ順番に呼んで、卒業証
書を手渡していく。

「うまく撮れますように」

 麻美は、まるで彼女たちの卒業を見に来た
母親のように、持参してきた自分のデジカメ
で、笑顔で皆が卒業証書を手渡されていると
ころを写していた。

「なんだか麻美ちゃんが一番嬉しそう。まる
で皆のお母さんみたい」

 ラッコの前に呼ばれて、先に卒業証書を受
け取っていたマリオネットの生徒の坂井さん
の奥さんが、自分の卒業証書を膝に抱えなが
ら、隆に言った。

「おままごとで、お母さん役でもしているつ
もりなんですかね」

 隆が言った。

「隆さんは、皆のお父さんですね」
「え、勘弁してよ。いきなり、あんなに大き


な娘がいっぱい出来てしまうんですか」

 隆は、苦笑していた。

第142回につづく