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花火を見終えて

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横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第74回

 予定していた花火は、すべて打ち上げ終わ
ったようだった。

「きれいだったね」
「これで、全部打ち上げ終わったのかな」

 ラッコのデッキ上で、花火を見ていた乗員
たちも、きれいな花火を見終わって、とても

満足していた。

「これから、マリーナに戻るんでしょう?」

 麻美は、テーブルの上の食べ終わった料理
がのっていたお皿を片付けながら、船長の隆
に聞いた。

 ほかの乗員たちも、船を出せるように、出
航準備を始めていた。

「船を出すのは、少し待とう。ほかの船が全


て出てしまってから、ゆっくり出航しよう」

 隆は答えた。

 港内には、ボートや屋形船、観光船がたく
さんまだ停泊していた。

 それらの船が、全艇一斉にエンジンをかけ
て走り出すと、港内のあっちこっちで、とて
も大きな引き波が立ってしまう。
 そうすると、隆たちヨットに乗っている人
たちは、その引き波で、まるで海に浮かんで

いる落ち葉のように、船体をぐらぐらと揺ら
されてしまうのだった。

 それで、ほかの艇がある程度出てしまって
引き波が少し収まってから、ゆっくり出航し
ようというのだ。

「それじゃ、お料理の後片付けを先にやって
しまいましょうね」

 麻美は、食事の後片付けをし始めた。


 ルリ子や佳代も、麻美の後片付けを手伝っ
ている。ゲストで来ていたはずの女性たちも
麻美のことを手伝ってくれていた。

 洋子と雪だけは、麻美の手伝いをせずに、
デッキに残って、隆と一緒に船が揺れないよ
うに、海面のウォッチをしていた。

「そろそろ、行こうか」

 だいぶ、さっきまで周りにいた船も皆戻っ
てしまい、引き波も収まってきたので、隆が

言った。
 洋子と雪は、もやいを外した。

 ルリ子たち、船内で後片付けをしている人
たちのことは、そのまま後片付けを任せてお
いて、三人だけで出航した。

 ベイブリッジを、今度は港の内側から外側
に向かってくぐってから、横浜マリーナを目
指すのだった。

 行きは、ゲストの女性たちの黄色い歓声で


賑やかだったが、帰りのベイブリッジは、洋
子たち三人だけなので静かだった。

「静かな夜の海で、ベイブリッジの下を通っ
て眺めるのもいいな」

 隆は、缶ビールを片手に船尾のベンチに腰
掛けながら言った。

「確かに」

 隆からステアリングを代わって、舵を握っ

ていた洋子が、後ろを振り返って答えた。

「あれ!もうベイブリッジを越えてしまって
いるじゃん!」

 後片付けを終えて船内にいた連中が、デッ
キに戻ってきて、ラッコのデッキ上は、途端
に賑やかさを取り戻していた。

「これから横浜マリーナに戻るの?」
「そうだけど。もっと、他にどこかに行きた
いか?」


「うん」
「よし、それじゃ、このまま太平洋を渡って
アメリカに行ってしまうか」

 静かな夜の海に、ラッコの乗員たちの楽し
い笑い声が響いていた。

第75回につづく


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