漁港で一泊

横浜マリーナ会員の斎藤智氏が執筆した大人のためのクルージングヨット教室を題材にしたマリン、セイリングクルーザー小説。

クルージング教室物語

第38回

 ラッコは、保田の漁港のポンツーンに停泊
していた。

「それじゃ、漁港に行って停泊料金を払って
来るね」

 麻美は、財布の入ったバッグを手に取ると
隆に言って船を降りた。

 佳代も、麻美の後を追ってデッキに出てき
た。麻美は、一緒に行くかって佳代のことも
誘った。

「はい」

 佳代も、麻美に続いて船を降りた。

 漁港のポンツーンを上がって行くと、目の
前に白い建物が建っている。
 そこが漁港の事務所だ。


 ここの事務所で、ラッコが港内で今夜一泊
させてもらうための停泊料を支払うのだ。
 建物の一階は、吹き抜けになっていて、獲
れたばかりの魚が水槽の中でいっぱい泳いで
いた。

「うわ!お魚さんがいっぱいいる!」

 佳代は、叫んだ。

「本当にお魚さんがいっぱいいるね。美味し
そうね」

「美味しそう?食べたら可哀そうだよ」

 佳代が、麻美に言った。

「でも、お料理したら、佳代ちゃんだって食
べるでしょう」
「うん」

 佳代は、麻美に笑顔で頷いた。

 麻美は、2階の事務所で停泊料を支払うと
事務所のスタッフにお食事券をもらった。


 保田の漁港の前には、「ばんや」という名
前のレストランがあった。
 漁港で獲れた魚を美味しく料理してくれる
レストランだ。漁港に遊びに来てくれたヨッ
トやボートには、そこでのお食事券をもらえ
るのだった。

「今夜は、ここのレストランで食事しましょ
うか」

 麻美は、もらったお食事券を佳代に見せな
がら、言った。

 「ばんや」で出てくるお料理は、魚も獲れ
たて、新鮮なのでけっこう美味しい。
 レストランとしても人気があって、都心か
ら車で、ここまでわざわざ食べに来るお客も
けっこう多い。

「これから、今日はどうするの?」
「後で、皆で駅前まで歩いてみましょうか。
駅前に行くと、お風呂があるらしいから、お
風呂に行きましょう。海で潮風を浴びている
から体がびしょびしょでしょう」
「うん。温泉がいいな」


「佳代ちゃんは、温泉が好きなんだ。じゃあ
温泉を探してみましょう。温泉があるといい
ね」

 麻美は、佳代の頭を撫でながら、笑った。

第39回につづく