テニスラケット

日本の商社のニューヨーク支店に勤める隆が、妹のゆみとニューヨークで暮らす二人暮らしのハートフルホームコメディ。

 車でボウリング場を出て、少し先にあるブ
ルーミングデールのあるショッピングモール
に移動した。

 来客用のタオルとか隆の仕事のときに着る
ワイシャツなどの日常品を購入してから、お
待ちかねのスポーツ店に向かった。
 スポーツオーゾリティーというアメリカで
は、有名な大型のスポーツ用品店だ。
 店内は各スポーツ毎に商品が別れて飾られ
ている。お目当てのテニス用品は、2階の奥
のスペースだった。ゆみは、先を行く隆の後

ろについてテニス売り場に行った。

「お、すげえ」

 スポーツ好きの隆は、テニス用品売り場で
スポールディングやウイルソンなどのアメリ
カの有名スポーツメーカーのテニスラケット
を手にとって興奮していた。

「このラケットも持ちやすくていいな」

 隆は、まるでゆみのラケットを買いに来た


ことなど忘れてしまったかのように、店頭に
並んだラケットを次々に手にとって試し振り
している。
 ゆみは、隆がラケットをいろいろ試してい
る姿を黙って待っているしかなかった。

「ゆみはどれにするんだ?」

 隆がゆみに聞いた。これまでスポーツなん
て全くしたことのないゆみには、どれを選ん
だら良いかなんて、さっぱりわからない。

「どのラケットがいいの?」

 ゆみは、逆に隆に聞いた。

「ゆみが一番欲しいって思うラケットを選び
なさい。どうせプロになるわけではないし、
おまえが一番好きって思えるラケットでテニ
スするのが一番楽しいだろう」

 隆には、そう言われたが、どれを選んだら
良いのかさっぱりわからない。隆は、ウイル
ソンの大きなラケットを手に取り、ラケット


の張りとかを試している。
 茶色の革張りの大きなラケットがあった。

「おお、これいいな!」

 隆は、それを手に取り、持つところの革張
りの感覚を確かめていた。

「それじゃ、あたしそれがいいな」

 ゆみが隆に言った。

「これ?これは、お前にはさすがに大きすぎ
るだろう」

 ゆみは、隆にそう言われてしまった。

 確かにテニスをするといっても、ゆみの場
合は、近所の公園で壁打ちテニスをするぐら
いだった。

「俺、これ買おうかな」

 なんだか隆は、すっかりその革張りのラケ


ットが気に入ってしまったようだ。ゆみは、
どのラケットにしようかな、テニス売り場の
中をあっちこっちうろうろして気に入ったラ
ケットがないかどうか探していた。

 そのラケットは、棚の角のほうに静かに置
かれていた。
 白いラケットに持つところが茶色くなって
いる。網はクリーム色していた。ゆみが、そ
のラケットが気になったのは、持つところの
エンドに可愛い飾りが付いていたのだ。ピン
クのモコモコした可愛いストラップみたいの

が、ラケットの角にくっついており、ぶら下
がっていたのだ。

「これ、可愛い♪」

 ゆみが隆に言うと、

「じゃ、それにするか」
「うん」

 ゆみは、大きく頷いた。隆は、ゆみが気に
入ったという可愛いラケットを受け取ると、


レジに持っていた。
 隆は、店員さんに頼んでプレゼント用の包
みとリボンまで付けてもらった。

「お前の誕生日は、秋でまだまだ先だけど、
今回は特別!お医者さんに体力が少しついて
きたと言われたお祝いだ」

 隆は、ゆみにリボンの付いたラケットを手
渡した。

「サンキュー、ソーマッチ」

 ゆみは、隆に大きな声でお礼を言った。

「ちなみに俺もこのラケットを買ってしまっ
たよ。今度、お兄ちゃんと近所の公園に壁打
ちのテニスしに行こう」
「うん!」

 隆は、さっきの革張りのラケットをゆみに
見せた。

「お兄ちゃんの誕生日は、もう春先に終わっ
てしまったばかりだよ」


 ゆみは、お兄ちゃんに言った。

「さあ、帰ろうか」

 隆とゆみは、それぞれ買ったばかりのラケ
ットを持って、スポーツ店を出た。

「メロディのおみやげ」につづく